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令和に八朔祭は消滅するのかー300年続く祭りを次の世代へ渡す使命ー

第2回 祭りを行う上での形式(体制)について(1)


はじめに


 「那珂湊天満宮御祭禮」は300年近くの伝統があり、江戸時代からの時代の流れとともに、祭りの形を少しずつ変えながら、この令和という時代まで受け継がれてきました。

しかし、将来的に現行の形式で祭りを行うことは難しいと考えています。

そこで、那珂湊の人々が過去に行った祭りの改革を見直し、未来に祭りを残せるような手がかりを得るため、今の形式に適する祭りの形式について考えてみたいと思います。

年番制度について

令和元年、七町目様の年番で行われた八朔祭りにて、
明神町に掲示された供奉順番表。

 年番制度の抱える問題点や今後の年番制度のあり方について考えていきたいと思います。

〇問題点


①町内間格差(年番町の負担が大きいことも影響)
②継承の難しさ
③(人口・資金)➡第4回にて掲載予定(5回に延期しました。)

 ここでは、年番制度における<町内間格差>と<継承の難しさ>について議論したいと思います。

①町内間格差


 次号で詳しく言及しますが、那珂湊の22町内間には大きな格差が存在しています。

これにより、小さな町が年番の年に居祭りの執行のみで、本祭が毎年行えないという問題が生じています。

現状として、大きな町だといわれていた町(小さいながらも財力があり、祭りに対する熱量が高い町)も今では、居祭りを行うことしかできない状況が挙げられます。

このことから、このまま今の年番制度を続けると、那珂湊地区の衰退に伴い、比較的大きいといわれている町も本祭を行えなくなり、2年に1度の隔年開催も不可能になると思われます。

今、祭りを中心的に動かしているのは言うまでもなく大きな町であるため、小さな町の状況に理解を示すことで、町内間格差の問題を考えるきっかけとなれば良いと思います。

②継承の難しさ


 また、今の年番制度の問題点として、継承の難しさも挙げられます。

現状では、大きい町しか本祭の執行ができていません。

これでは、年番のやり方を理解している後継者の数も限られてしまいます。

今まで大切に継承されてきた年番制度だからこそ、見直す必要があるのではないでしょうか。

〇年番制度の今後のあり方に関しての議論


 過去にも年番制度に関して、先人の試行錯誤の末、様々な工夫が施されてきました。

例えば、支那事変(1937年)の時からは、本祭を執行しなくても年番の引継ぎが可能となる改革や三町目と水門町の2町内で合同の年番をする工夫など、上手くいったものや、失敗に終わってしまったものが過去に多くありました。

多くの改革があった中で、過去に提案されたが、実行されなかった改革に、「年番制度を廃止し、各町の代表委員からなる組織を作り、祭りの執行を司る」(下図1を参照)といったものがあります。

図1:過去に提案された改革案の図

当時、この改革案は、「1.町内間格差による影響を出さない」「2.本祭を毎年執行する」ということを意図して、提案されたのではないかと思います。

また、他にも検討できる案が複数あると思いますが、下の図2は、過去に提案された改革案に、年番制度を廃止しないという変更を加えた案です。

図2:年番制度を維持したまま、提案された組織に年番町のサポートを行ってもらう。

図2のような形にすることで、「年番町の負担の軽減」「小さな町でも年番の役割を担える」といったことも実現できると考えています。

さらに、今年、行われた第一回責任役会で話題になった「年番町の人員不足」といった課題の解決にもつながるのではないかと思われます。

過去に提案された改革案を手掛かりに、今後も継承できるような制度改革をしていく必要があるのではないでしょうか。

 まとめ


 「天満宮祭事資料 元町氏会」(昭和55年発行)によると、「年番を喜んで引き受ける町は少ない」とあります。

たしかに、年番制度は長く続いてきた歴史のある制度で、変えるべきではないという声があるのは承知しています。

しかし、隔年開催の根本的な問題である年番制度についての議論を深めなければならないと思います。

社会が大きく変わっている今、この時代に、先人たちが残したすべての制度を残すことは難しいと思いますが、多くの人が知恵を絞ることで、残すべきものを未来に引き継げると考えています。

参考資料:
菊池恒雄 1993 『屋台のわだち―聞き書き・那珂湊天満宮の祭礼異聞―』 筑波書林

                1980 『天満宮祭事資料 元町氏会』 那珂湊市中央1丁目11番7号天満宮馬場先

★告知

 次号の報告書では、「祭りを行う上での形式(体制)について(2)」というテーマで、<他地域との祭りの比較や、八朔祭りに参加するための入り口>に焦点を当てて、議論をしたいと思います。

第3回の掲載予定は6月下旬頃です。

この報告書とは別に「神事」ということを思慮した記事の作成を検討しています。

★おねがい

①今回の議論のテーマである「年番制度」について、本文の感想やご意見をコメント欄に記載してください。

②祭りに関わる皆さまに、共有・拡散していただけるとありがたいです。

③第1回の報告書にアンケートがありますので、回答していただけると幸いです。



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