【演劇】『LGBT、治します。』(12/16)

シーン12 ハルカ家の衝突

ハルカ、ハルカ家に帰宅。すでにハルカ母とハルカ父は夕食を食べ始めていた。

ハルカ: ただいまー。
ハルカ 母: 遅かったわね。自習?
ハルカ: まあ、そんな感じ。

ハルカ母、食卓にハルカの分の食事の準備をしている。

ハルカ 母: 期末テストは大丈夫そう?
ハルカ: うん。
ハルカ 母: 進路表は?
ハルカ: 出さなきゃ。
ハルカ 母: 明日までって言ってなかった?
ハルカ: ああ、うん。

リュックから進路表を取り出して、机に出す。

ハルカ 父: あ、ハルカ、ここ間違ってるぞ。推薦使うんだろ? Y女子大の。
ハルカ: え? いや……。
ハルカ 父: でももう決めなきゃなんだろ? 推薦だったらそろそろ準備とかしなくちゃだろう。
ハルカ: でもY女子大に医学部ないし……。
ハルカ 父: 医学部は諦めろって。
ハルカ: でも……。
ハルカ 父: 医学部はな、ほかのところと違って学費が倍くらいかかるんだ。
ハルカ: でも、国立の医学部だったら……。
ハルカ 父: 推薦はほとんど落ちないんだろ? 医学部受験して落ちたらどうすんだ? 

ハルカ、食卓につく。

ハルカ: それは、落ちないように……。
ハルカ 父: 高い学費払って結局浪人とか、もうそんなお金うちにはないからな。
ハルカ: わかってる。だから、……がんばってるじゃん。
ハルカ 母: 一応、Y女子大にも家政学部があるわよ?
ハルカ: それ医学部じゃないじゃん。
ハルカ 父: わがまま言うんじゃない。女子はな、医者になるのが目的じゃない。ちゃんとどこかのお嫁に入って、結婚して、子ども産んで、お母さんになるのが使命だろ? 違うか?
ハルカ: そう、だけど……。
ハルカ 父: 女子が医学部行ったってしょうがねえんだって。なあ?
ハルカ 母: そうねえ……。好きにしてもいいと思うけど……。ハルカは学校で一番だし、先生もじゅうぶん狙えるって。
ハルカ 父: 女子はな、頭じゃない。華だ。そうだろ? 頭で勝っても、華で負けちゃ意味がない。

照明が、ハルカのことをだけを照らすように変化する(この照明は無色)。

ハルカ: なんで?

ピキッ、とガラスが砕け始める音が鳴る。ハルカの照明が赤色になる。
ハルカ母とハルカ父が、無色の照明で照らされて浮かび上がる。

ハルカ 父: お前を思って言ってるんだ。

ピキッ、とガラスが砕け始める音が鳴る。ハルカの照明が橙色になる。

ハルカ: 今まで、お母さんとお父さんのことを思って頑張ってきたのに……。

ピキッ、とガラスが砕け始める音が鳴る。ハルカの照明が黄色になる。

ハルカ 父: テレビでいつもやってるだろ? 医者っていうのは激務で、子どもができたら絶対続かないって。だからやめたほうがいい。これが現実だ。

ピキッ、とガラスが砕け始める音が鳴る。ハルカの照明が緑色になる。

ハルカ: いつになったら自由になれんの?
ハルカ 父: もう十分自由じゃないか。Y女子大に行ったらもっと自由にできる。何をそんなに怒ってんだ。

ピキッ、とガラスが砕け始める音が鳴る。ハルカの照明が青色になる。

ハルカ: そういうことじゃなくて……。(と、顔を手で覆う)
ハルカ 父: なんだよ。
ハルカ 母: お父さん。

ガラスが砕ける音。ハルカの照明が紫色になる。
ハルカ、ポケットから薬の入った袋を取り出して、食卓に投げつける。

ハルカ: あのさ、これ。これ、何かわかる?
ハルカ 父: なんだ?
ハルカ: (薬の袋を取って、ハルカ父の顔の前に突き出す)これが何かわかるかって聞いてんだよクソジジイ。
ハルカ 父: なんだその口の利き方は! 
ハルカ: これが何かわかんのかよ!
ハルカ 父: (ハルカの手に掴みかかる)外に出なさい。
ハルカ 母: 二人ともやめて。

ハルカ母が、ハルカ父をハルカから離す。ハルカ、荷物を取りに自室に出ていく。
ハルカ母とハルカ父、お互いを責めるように沈黙している。
しばらくして、ハルカが自室から出てくる。リュックをもっている。
服装はTシャツにパンツ。ヘアピンはしていない。

ハルカ 母: どこ行くの!
ハルカ: どっか。
ハルカ 父: 勝手にしろ。
ハルカ: するよクソが。

ハルカ、家を出ていく。

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