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USCPA | #2 USCPAが私に与えてくれたもの

こんにちは、水瀬です。
今回は、USCPAが私の人生にもたらしたものについて、学習期間中と習得後に分けて私自身の経験を書いていきたいと思います。


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この記事の対象者

  • USCPAに興味を持っている方(学習中の方)

  • 海外駐在を実現したいと考えている方

  • 何かに挑戦してみたいと考えている方



2年の学習期間中に習得したこと

FAR (Financial Accounting and Reporting)

財務会計を網羅的に学ぶFARの学習を通じて、私が習得したのは以下の能力です。

  • Accountingの基本知識(US GAAP)

  • Financeの基本知識

  • 各種財務諸表(FS)の理解・活用

第一に、Accountingの基本知識をUS GAAPベースで体系的に学ぶことが出来ました
『日本で働いているのに米国の会計基準を勉強したとて役立たないのではないか』という声もあるかと思いますが、そんなことはありません。会計原則は細かな差異はあれどその基本概念は共通することが多く、自分の頭の中にある程度の会計に関する全体像をインストール出来たことは仕事でも大変役立っています。(私自身、会計を専門とする部署ではないため、普段の業務では”JCPA”で学ぶような難易度の高い基準理解や原価計算等はあまり求められません。その意味で、USCPAの分量は”適切”であったと感じています。)

第二に、『夫々の事業がどんなJE(仕訳)で認識されるのか / 財務諸表にどういった影響があるのか』というように、自分が担当する案件の解像度・理解度が格段に上がりました
これにより、自分が対峙する相手(ex. 客先 / 上司 / 後輩)に応じて説明の深度を変えられるようになったと感じています。

第三に、各種財務諸表の理解が深まったことで、いわゆる”PL重視”から”BS/CFS重視”の基本姿勢がアカデミックな形で身についたと感じます。
学習前は仕事上の成績としてどうしてもPLの影響が気になっていたように思いますが、BS/CFSとの連関を深く学んだことで視線がBS/CFSへと自然と移るようになりました。
また、(後に紹介するBECで学んだ知識と併せて)海外駐在時には”中長期的な成長のために必要なことは何か”ということについて自分なりの見解を”英語で”簡潔に説明することが出来ました。(この体験談については改めて別の記事にしたいと思います。)

AUD (Auditing and Attestation)

監査手続きを網羅的に学ぶAUDの学習を通じて、私が習得したのは以下の能力です。

  • FSのWalk-throughにおける勘所の把握

  • 内部統制の理解

  • 監査法人・社内コーポレート部署の業務理解

まず、"FSのWalk-throughにおける勘所の理解"です。
業務上、私は自分で財務モデルや予算案を作成する機会が多く、客先や上司に共有する前に間違いがないか確認する工程に相当の時間を費やしていました。AUDでは監査法人がクライアント企業から提出されたFSについて誤りが無いかを確認する手法を学びます。限られた情報を基にFSが正しいかを判断するために留意すべきポイントを学ぶ過程で、自分の業務にも活用できる事例をいくつか学ぶことが出来ました。

第二に、”内部統制に対する理解”が深まったことです。
企業の不正リスクを防ぐために何故内部統制の設計が必要なのかを体系的に学んだことで、海外駐在時に組織運営を考える上で役立ちました。

第三に、”監査法人・社内コーポレート部署の業務理解”が深まったことです。
私の業務上、新規案件を立案する際に”税務リスク”や”会計論点”について経理部のサポートを受ける機会が多くあります。一連の学習を通じて、”経理部が普段何をしているのか”についての理解が深まり、より円滑なコミュニケーションを図れるようになったと感じています。(余談ですが、同時に彼らに対するリスペクトの念も深まりました。)

BEC (Business Environment and Concepts)

ビジネス分析と経済について網羅的に学ぶBECの学習を通じて、私が習得したのは以下の能力です。

  • 管理会計の基本知識

  • ミクロ/マクロ経済学の考え方

  • 事業活動に関する見解を英語で表現する力

正直なところ、USCPA学習を通じて得たハードスキルの中で最も仕事に直結しているのがこのBECを通じて学んだ知識です。

第一に、”管理会計の基本知識”を習得することが出来ました。
予算策定から運用/修正に至る一連の流れの中で、Managerとしてどういった要素に焦点を当てて経営管理すべきか、その概観を学ぶことが出来ました。学習と並行して、当時担当していた案件の試算表を精緻化し、各種経営指標の可視化にも取り組みましたが、今振り返るとあの時が”仕事がより一層楽しくなったターニングポイント”だったように思います。

第二に、”ミクロ/マクロ経済学の考え方”を学ぶことが出来ました。
大学時代にも勉強したことがありましたが、改めて学習する良い機会であったように感じます。

第三に、”事業活動に関する見解を英語で表現する力”を習得することが出来ました。
当時の必須科目であったBECには、記述問題(WC)に15点分の配点が与えられていました。設問の状況を踏まえて”一担当者としてどのような課題を認識し、どのような施策を打ち出すのか”、また”その施策が何故有効なのか”といった内容を英語で作文する形式のものです。試験対策の一環で様々なケース問題を解く過程で、自分が学習した知識がどのようにビジネスの現場で役立つのかという生きた事例を吸収することが出来ました。私個人としては合計100題超のケース問題を解きましたが、この訓練がその後の海外駐在においても大きな武器になったことは間違いありません。

資格取得のためにただ多くの知識を習得(=インプット)するだけではなく、実際のビジネスにおいてどう活用(=アウトプット)するかを並行して学べるという点が、USCPA学習の一番のメリットなのかもしれません。

REG (Regulation and Taxation)

諸法規・米国税制を網羅的に学ぶREGの学習を通じて、私が習得したのは以下の能力です。

  • 税法の一般的な考え方

正直なところ、REGについてはあまり得られるものは多くありませんでした。(米国の税法は非居住者である限り何の役にも立ちません。)ただ、税法の一般的な考え方を学べたという意味では参考になりました。(税金として出来るだけ多く徴収しようとする一方、意外なもの・細かいところに控除規程が設定されており、驚いた覚えがあります。)

全般:学習を通じて得たもの

USCPA学習全般を通じて、私が習得したのは以下の能力です。

  • 自分なりの成長戦略(立案/修正/実行)

  • タイムマネジメント能力

  • 生活習慣の確立

  • 自分に対する自信と信頼

第一に、”自分なりの成長戦略”です。
USCPA学習を通じて、
・目標達成に必要な計画の立案力
・不測の事態に陥った場合の修正力
・立てた計画を完遂する実行力

を手に入れることが出来ました。
私の場合、学習期間中に約3か月の海外長期出張を経験しました。出張の1週間前に突然決まってしまったため、それまでに立てていた計画を見直す必要がありました。(出張期間中、どれほどUSCPA学習に時間を費やすことが出来るか不明でした。また、業務で要求される別の試験勉強もあり、結果としてこの期間は1時間もUSCPA学習をしませんでした。)出張終了後、当初想定していたプランを見直し、一から計画を立て直すことになりましたが、この時の経験が”臨機応変に計画を見直すことが出来る”という自信に繋がっています。
USCPA学習を通じて得た この”成長戦略”を仕事にも応用し、自身の成長曲線を上げるための”PDCAサイクル”を効果的に回すことが出来るようになったと実感しています。(私の成長戦略については別の記事にしたいと思います。)

第二に、”タイムマネジメント能力”です。
社会人として働きながら資格を取得するのは容易ではありません。(現にUSCPAも脱落者の多さで有名なようです。) 自分の”可処分時間”を見極めて正しく投下することの大切さをUSCPA学習を通じて痛感しました。

第三に、”生活習慣の確立”です。
当時私が所属していたのは、会食や飲み会が週1程度の比較的落ち着いた部署ではありましたが、どんなに前日に飲んでも(あるいは深夜まで仕事をしたとしても)朝5時に起きて就業開始前に2時間学習を積み上げる生活習慣を確立しました。元々、早起きは苦手な人間だったのですが”絶対に完遂する”という不退転の覚悟の下で継続したことで、今では朝5時に起きる習慣が常態化しています。

第四に、”自分に対する自信と信頼”です。
自己紹介記事を読んで頂いた方はご存じの通り、私は挫折経験により自分を情けなく思う時期・自信を持てない時期がありました。そんな私でも”自ら立てた計画に沿って資格取得までやり切った”という一種の成功体験は自分に対する自信と信頼を再び与えてくれるきっかけになりました。
仕事でも追い込まれた時に”自分なら最後までやり遂げることが出来るんだ!”と思える力が精神的にも大きな支えになっていると感じます。


USCPA取得後に感じた恩恵

最後に、USCPA取得後に感じた恩恵について紹介します。
現時点で感じる恩恵は以下の2つです。

  1. 錯覚資産:USCPA=英語×会計知識を有する人材と印象付けることが出来る

  2. 周辺環境:自然と高い志を持つ仲間のいる環境に身を置くことが出来る

1. 錯覚資産:USCPA=英語×会計知識を有する人材と印象付けることが出来る

1点目は(動機とも一致しますが)”USCPA=英語×会計のエキスパート”という印象を与えられることです。
USCPAの資格を保有しているからといって、英語と会計のエキスパートを名乗るには程遠いのが実態です(USCPA取得者なら特に実感していることと思います)。なぜならUSCPAは会計士としてのエントリースキルであり、あくまでスタートラインに立っただけであるためです。
私自身、資格を維持するための継続学習(CPE)にも取り組んでいますが、『士業として使うには全く理解が足りていないな』と自分の未熟さを都度痛感しています。
それでも、第三者から見れば”USCPA=英語×会計のエキスパート”なのです。相手から一目置かれると、仕事に関する相談やアサインメントも増えていきます。私自身、駐在派遣時には年次以上にUSCPA保有者というステータスが重視されたように思いますし、派遣先でもウケが良かった(=現地スタッフからの早期信頼獲得に繋がった)ように思います。

また、転職サイト経由でのオファーが数倍に跳ね上がりました。

2. 周辺環境:自然と高い志を持つ仲間のいる環境に身を置くことが出来る

2点目は周辺環境が大きく変わったことです。私の場合、USCPA資格取得を通じて知り合った仲間が数名いますが、皆さんそれぞれに高い志を持って挑戦していました。資格取得後も更なる高みを目指して自己研鑽に励んでおり、そんな彼らの姿を見て『自分も負けていられない』と思える環境に身を置くことが出来たのは紛れもなくUSCPAがもたらした財産であると私は考えています。(まさに、『朱に交われば赤くなる』というところでしょうか。)


終わりに

今回の記事、いかがだったでしょうか。
USCPAの学習を通じて、私は投下した時間・お金以上の対価を得られたと確信しています。

未習の貴方へ
今この記事を読んで少しでも『USCPAに挑戦してみようかな』と思われている方がいたら、迷うことなく挑戦してみることを強くお勧めします。

学習中の貴方へ。
もし、『学習が思うように捗らなくて辛い』『果たして資格取得したとしても現状が好転することはないんじゃないだろうか』と感じているようであれば安心して下さい。確かに、正式に”USCPA”保有者になることが一定の価値を持つことは間違いありません。しかしながら、学習の過程で得られた経験・知識の方がその後の仕事において役立つこともあるのです。(私自身がそうでした。)そういった意味では、”資格取得が目的、学習はその過程に過ぎない”というわけではなく、”学習期間こそ目的、資格取得は副産物だ”とも言えるわけです。
どうか自信をもって、初心に立ち返って最後まで完遂することが出来るように応援しています。

この記事が少しでも読んでくださった皆さんの参考になれば幸いです。
最後までご覧頂き、有難うございました。それでは。


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