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戦場におけるストレスコントロール (無料版1)

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訳者のまえがき

本書は「FM6-22.5 COMBAT AND OPERATIONAL STRESS CONTROL MANUAL FOR LEADERS AND SOLDIERS」という、米陸軍が2009年3月に発行したマニュアルを翻訳したものです。今のCOVID-19の蔓延という状況下において、非常に役立つ部分を含んでいることに気づき、昔の翻訳を見直して再発行を行った次第です。

本書は一部を抜粋したダイジェスト版であり、無料版です。
内容を限定し、または圧縮しています。(略と書いた部分以外にも省略があります)深い内容を知りたい場合は、有償版(準備中)の購入をご検討ください。

本書の第一の目的は、現在と過去と未来において、病気と闘っている医療従事者、各種専門家、社会インフラ従事者、物流業の従事者、自衛隊、公務員、スーパーやコンビニやドラッグストアやその他の小売業の従事者、ホテルや宿泊業の従事者、銀行や金融機関の従事者、マスクや医療品やその他の必要な物の生産の従事者、バスや電車、その他の交通機関の従事者、葬儀場・火葬場の従事者、ごみ処理関係の従事者、その他の日夜病気と闘っている多くの方々への支援となることです。

皆様の心理的負担が少しでも軽くなることを願いつつ、前書きの結びとします。

表紙(結合)

第4章 睡眠不足

第1節
序文と作戦環境での睡眠

4-1.このガイダンスは、訓練環境と戦術環境の両方を含むすべてのレベルの軍事作戦に適用されます。

4-2.睡眠は生物学的に必要なものであり、戦場での成功に必要な精神的能力を維持するために重要なものです。兵員は、作戦準備態勢を維持するために、24時間ごとに7~8時間の質の良い睡眠を必要とします。睡眠をとらない場合、時間の経過とともにパフォーマンスを深刻に損なうことになります。この負債を返済する唯一の方法は、必要な睡眠をとることです。軍事作戦の過酷な性質上、睡眠を得ることが困難な場合も多々あります。不屈の決意や意志の強さは、作戦の成功に必要ではありますが、睡眠不足の影響を相殺することはできません。この概念は、軍事作戦のすべての階級とすべての作戦環境に適用されます。

4-3.このため、睡眠は、水、食料、燃料、弾薬のような補給物資と同じくらい重要であると考えるべきです。指揮官は、自分自身と部下に十分な睡眠を確保するために、積極的に計画を立てる必要があります。

4-4.個人および部隊の有効性は、自発性、意欲、体力、持久力、そして明確で正確かつ迅速な思考能力に依存します。睡眠を取らない期間が長ければ、兵員は鈍くなり、混乱し、ミスを犯すことが増えます。注意力の欠如が起こり、正確さを維持するためにスピードが犠牲になります。連続業務のパフォーマンス低下は、断続的な仕事のパフォーマンス低下よりも急速に進みます。

4-5.射撃要請やレンジカードの統合、陣地の確立、分隊戦術の調整などは、睡眠不足の影響を強く受けます。例えば、武器で正確に狙いをつけることはできても、正しい標的を選択できないかもしれません。

4-6.パフォーマンスの低下に加えて、気分、モチベーション、イニシアチブの変化が予測されます。このため、睡眠不足の外見上の兆候がない場合でも、兵員はまだ最適に機能していない可能性があります。

睡眠時の環境情報と関連する因子
4-7.最適なパフォーマンスと有効性を得るためには、24時間ごとに質の良い7~8時間の睡眠が必要とされています。毎日総睡眠時間が、この値を下回れば下回るほど、パフォーマンスが低下していきます。

4-8.睡眠ルーチンを計画するための基本的な睡眠スケジュール情報が、表4-1に記載されています。基本的な睡眠時の環境情報と他の関連する因子は、表4-2に記載されています。

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第2節
持続・連続作戦中のパフォーマンスの維持

対策によるパフォーマンスの維持
4-9.冷たい空気、騒音、運動は、一時的に兵員を覚醒させることはあっても、パフォーマンスを改善することはできません。

4-10.睡眠不足時のパフォーマンスを効果的に改善する唯一の対策は、覚せい剤(カフェインやデクスドリン®、プロビジルなどの処方箋用覚せい剤)のみです。しかし、これらの対策は、短期間(2~3日)のパフォーマンスを改善する場合に限り有効であり、すべてのパラメータを正常なレベルまで回復させることはできません。カフェインは、処方箋用覚せい剤と同じような効果を持ちます。

カフェインによる対策
4-11.カフェインなどの薬理学的な対策は、短期使用のみ(2~3日)使用できるものであり、睡眠の代わりにはなりません。

4-12.カフェインは、次のような飲料、ガム、および非処方箋薬に含まれています。
・12オンスの無水カフェイン:40~55mg
・No-Doz :1錠100mg
・Vivarin:1錠200mg
・カフェインガム(StayAlert) :1枚 100mg
・Joltコーラ :71mg
・Red Bull Energy Drink :80mg

注意.液体は尿が増えるので、睡眠が妨げられることがあります。これを回避するには、カフェインは、ピル、錠剤、または他の液体ではない形で摂取する必要があります。

4-13.睡眠不足の影響は、早朝の時間(0600~0800)が最も深刻です。カフェインのような対策が必要になることが多く、この早朝の小康状態の時間帯に非常に有効です。

4-14.睡眠の機会がないときのパフォーマンス維持のためにカフェインを使用する場合のアドバイスを以下の表4-3にまとめました。記載した時間はおおよその目安であり、個々の状況に合わせて調整することができます。

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睡眠の回復
4-15.最終的に、兵員には回復するための睡眠を許可する必要があります。1回の急性の全睡眠喪失(2~3日)の場合、大部分は通常、12時間の回復睡眠が(できれば夜間に)許可されれば完全に回復します。

4-16.継続的な作戦中の慢性的な制限された睡眠の後、兵士は完全に回復するために7〜8時間の夜間の睡眠を数日間、必要とする場合があります。

勤務スケジュール
4-17.通常の勤務スケジュールは勤務8時間、オフ16時間です。16時間のオフは、8時間の十分な睡眠をとり、さらにメンテナンスや食事、衛生管理などに十分な時間を確保することができます。

4-18.十分な睡眠を可能にするために、指揮官は可能な限り、単一の長い非番を自分と兵員に与えなければなりません。「16時間オフ、8時間勤務」が不可能な場合は、次の最良のスケジュールは「12時間オフ、12時間勤務」です。一般的には、「12時間オフ 12時間勤務」というスケジュールは、「6時間オフ、6時間勤務」より優れており、「16時間オフ、8時間勤務」というスケジュールは、「8時間オフ、4時間勤務」より優れています。これは、オフ時間が、長い単一の時間になっているためです。

4-19.オン/オフのシフトは合計24時間でなければなりません。1日が短く、または長くなるようなシフトは(例えば、12時間オフ、6時間勤務というような、一日を18時間とした勤務)は、兵員の注意力とパフォーマンスを低下させます。

夜勤
4-20.一般的には、兵員は、固定された夜勤であっても、夜勤の仕事に完全には適応することはありません。

4-21.兵員の睡眠時間を守るために、指揮官は昼間(睡眠時間中)に食事、ブリーフィング、兵員の日常のメンテナンス業務のスケジュールを設定してはいけません。

4-22.カフェインは、パフォーマンスを改善するために、夜勤中に使用することができます。

4-23.日中の睡眠を開始するまで、日の出時間以降はサングラスをつけ、夜勤明けの兵員の目を日光にさらすのは、避けるべきでしょう。

タイムゾーンをまたぐ移動
4-24.~ 4-27.略

第3節
睡眠不足と睡眠不足の代替案への理解(効果と誤解)

睡眠不足に特有の影響
4-28.睡眠不足は、(警備、運転、または機器の監視など)刺激の少ない環境において、居眠りに落ちる兵員を増加させるでしょう。著しい睡眠不足が存在する場合、指揮官は、警備活動に穴を開けないために、勤務の長さを変えたり、2人以上のチームに警備を行わせたりすることを検討する必要があります。

4-29.高いテンポ環境でも、睡眠不足は、下記のような複雑なメンタルオペレーションに、直接影響を及ぼします。(あるいはこれらに限定されません)
・友軍と敵部隊(分隊の位置についての知識)と配置確認。
・カモフラージュ、カバー、および隠蔽の維持。
・調整や情報処理。(他の自走砲との砲撃の調整、他に派遣された支隊との連携)
・戦闘活動(走行している車からの射撃や、敵地の地形偵察)
・兵力保全と再編成(分隊の解散と再統合を調査する)。
・指揮統制活動(再配置の指示、攻撃に備えた反撃の準備、火制ゾーンと目標の割り当て)

4-30.睡眠不足に苦しんでいる兵員は、複雑な作業(例えば、砲撃要請や陣地の確立)より、日常的な身体的作業(行進や弾倉の装填など)なら実行することができます。しかし、最終的にパフォーマンスは損なわれることになります。

4-31.長期(数週間、数ヶ月)の慢性的な睡眠不足は、気分、意欲、自発性を低下させます。

4-32.睡眠不足の指揮官と兵員は、自分の能力について判断する力が低下しています。

4-33.睡眠不足は、迅速な決定を行う能力を損ないます。これは倫理的判断を必要とする意思決定のときに、特に当てはまります。自分の行動について考えるために十分な時間が与えられていれば、完全に休養した時と同じ決定をする傾向があります。しかし、急接近する車両に発砲することを決定するような、とっさの判断が必要な状況に置かれたとき、睡眠不足は意思決定に悪影響を与える可能性があります。

作戦環境での睡眠不足の判断
4-34.睡眠量は、兵員に睡眠記録をつけさせることで測定することができますが、コンプライアンスは非常に低くなる可能性があり、信頼性に乏しい結果になります。

4-35.兵員の睡眠の状態を評価する最良の方法は、彼の行動を観察することです。

4-36.睡眠不足は、当たり前の質問をすることで確認することができます。
「最後に寝たのはいつで、どのくらいの時間寝ましたか?」や「この24時間でどのくらい寝ましたか?」などの質問をします。

4-37.略

睡眠と睡眠不足に関するよくある誤解
4-38.一般的には、24時間あたり4時間の睡眠で十分なパフォーマンスを維持できると考えられていますが、実際には4時間睡眠が5~6日連続すると、あたかも24時間連続して起きていた場合と同じくらいの障害が生じます。

4-39.もう一つの誤解は、不適切なタイミング(例えば勤務中)に、居眠りをするのは、怠惰や怠慢、または意思の力の欠如が原因である、という考えです。実際には、これは部隊の指揮官から、十分な睡眠時間を与えられていないことを意味している場合があります。

4-40.兵員は、自分は睡眠不足の影響を受けにくく、仲間より少ない睡眠時間でも問題なく、よりタフであると考えがちです。これは、睡眠不足の兵員が、自分のパフォーマンスがどのように損なわれているかについての自己認識を失っているためです。

4-41.一部の人々は、自分はどこでも眠ることができ、外部の騒音や光が気にならないほどの快眠者であると考えている人がいます。しかし、騒がしくてよく照らされた環境では、睡眠は常に軽く、より断片的になる(したがって、回復力が低い)ことが示されています。

4-42.多くの人が、習慣的に、6時間以下の睡眠しかとらないのは事実ですが、これで十分であるというのは事実ではありません。

睡眠不足の代替方法
4-43.パフォーマンスの低下を克服する方法は、以下のようなものがあります。
・パフォーマンス低下の兆候が見られたら、昼寝をしたり、手順を変えたり、仕事を交代したりする時間を見つけること。(交代者がいる場合)。
・睡眠不足の影響を強く受けている兵士には、自分のペースでタスクを実行させること。
・睡眠前に、トイレに行くように促す。
・優先順位によって睡眠を割り当てる。指揮官は、優先順位が最も高く、最大限、睡眠時間を割り当てる必要がある。

あとがき

「睡眠不足」の項目は以上。
反響があれば「ストレス反応とその識別」「ストレスの予防、管理、コントロール」「自殺対策」あたりが追加になるかもしれません。

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