📕『かわいそうだね？』

2023年１冊目。
『かわいそうだね？』（綿矢りさ 著）
面白すぎた。大当たり！！

綿矢りささんの作品を初めて読んだけど、最高だった。女性ならではの着眼点、心情描写、表現力、そして妄想の膨らませ方が面白いのなんの。綿矢さんハマりそう。

『かわいそうだね？』と『亜美ちゃんは美人』の２作が収録されていて、どちらも本当に面白かった！

＊

まずは『かわいそうだね？』について。

主人公・樹理恵の彼氏である隆大が、

「元彼女が仕事も住むところもなく困ってるから助けたい。だから自分の家に居候させる。でもあいつとヨリが戻ることはない。愛しているのは君だけだ。できれば別れたくない。でも君が受け入れられないなら別れるしかない」

とか言い出す。

いやいや！！そんなん有り得へんやろ〜〜！！！と思わず突っ込んだ。何を言い出すかと思えば、、、ナメてんのかい？？？（樹理恵に感情移入中）

読み進めると、彼はアメリカ育ちだそうで。アメリカで辛かった時そばで支えてくれたのが元彼女だそうで。その元彼女が今かわいそうな状況だから助けたいそうな。

…隆大、ヤベェやつだぜ。

とは思ったものの、やっぱり人それぞれ事情はあるし、自分の価値観を樹理恵に乗せて読んでたから、ダメダメ、自分にとっての普通が世界中の普通なわけじゃないし、生まれ育った環境や国が違えば常識も大きく異なるだろうから、受け入れてみようよとも思った。（丸め込まれててウケる）

物語の中でも樹理恵が、後輩や英会話の先生に相談したり、2人の住む家を突撃訪問してみたりして、結果、考えを改めている。

元彼女は「かわいそうだから」。しょうがない。許してあげる。しんどいけど。特殊な状況だけど、私たちが最終的に幸せになれるなら、乗り越えるしかない。必要な状況だからしょうがない。しんどいけど。

ここ凄い分かる〜〜！！！！！！！！！（うるさ）

自分が最初に「許せない」と思ったことをあれやこれやと考えを巡らせて、頭では理解して、どうにか自分自身を説得して、自分の意思で許すことを選択したんだと納得しても、しんどい。めちゃくちゃしんどくなる。とにかくしんどいの。（何回言うねん）

自分の出した結論と、心の動きが全くリンクしない。結局は心の奥底に眠る感情と、元々の考えは変わらない。「許せない」の一択。

「許せない」ことは許さなくていい。（自戒１）

母が「私は絶対に許せないから即刻別れるけど、隆大がもし逆の立場だったら許せるのかな？」と言ってきて、うわっ、確かに。と思った。
（母はまだ読んでないのに私が大まかなあらすじを伝えてあーだこーだと語り合っていたので、母もすっかり読んだ人のテンションになっててオモロ）

え〜〜どうだろうね？でも隆大自身が他者に理解を求めてることなんだから許せるんじゃない？知らんけど…
気になるので誰か隆大に聞いてきてください（無茶）

でも例えば、私が「元彼が家もお金もなくて実家も遠いから私の家にしばらく住まわせるよ！」と言って、「そっか！分かった！君は優しいね」と彼氏が許してくるのもめちゃくちゃ嫌だな。え、私のこと好きちゃうん？心配にならへんの？てなる。私のことは信用してくれてたとしても、元彼のことなんも知らんやろ？なのにいいの？ほんまに？ふーーーーーん。てなる。まあそもそも元彼を自分の家に住まわせるとか有り得へんけどさ。

やばいこのネタでしばらくあれこれ議論できそう。初対面の人と会話の間が持たない時にこの話題ふっかけてみよかな？（やめなさい）

【 ※ 以 下 ネ タ バ レ 含 み ま す 】

樹理恵が言いたいことを関西弁で言いまくるところ、めちゃくちゃスカッッッとしたー！！！

隆大が弱い自分も愛してほしいなどと言っていたけど、やかましわっ！！！と合いの手を入れていた。どんな弱さよっていう。私たち女性（と勝手に一括りにしてごめんなさい）が許したい弱さとはちょっと違うんよな。なんか言語化できないけど。（←隆大について考えることに少しばかり疲れてきた人）

やはり自分を大切にしてくれない人、自分に対して不誠実な人とは、距離をおくべき。（自戒２）

ところで私にも樹理恵みたいな関西弁が搭載されていたらどうしようってワクワクした。今までもこんな修羅場になったことはないし、できればこの先もこんな修羅場は経験したくないので、搭載されていたとて出番のない機能で良いんだけど。自分でさえ知らない自分に出会えるのって面白いよね。興味ある。（修羅場フラグ立ったら困るから黙ろ）

＊

セール期間中に、夜お風呂で頭を洗っていると、シャワー立てる音の向こうから、いらっしゃいませという女性の声が聞こえてきて、はっと周りを見回す。もちろん浴室には自分以外だれもいない。いらっしゃいませのさざ波が自宅にまで押し寄せてくるようになると、いまが佳境なんだなとぼんやり分かる。

『かわいそうだね？』P33

ううっ。しんどいね。お仕事お疲れ様です！！！
ちょっと違うけど、私これ悩んでる時とかそうだな。基本お風呂はライブ会場で楽しい場所なはずなのに、そこで勝手に苦手な人やらがマイクぶんどって声を轟かせ始めたら、ああ自分限界が近いのかも…って自覚する。

私たち日本人が重んじる〝和〟は、実は相互の深い親切心のもとで成り立っているわけではなく、表面的なのかもしれない。人でなしとは思われない程度の親切と、身内以外の人に迷惑をかけるくらいなら切腹するぐらいの遠慮をもってして、かろうじて機能している繊細な絆だ。言わずに察する文化で支え合っている私たちは、そのルールを無視する人間に接すると、著しく憤慨して疎外する。

『かわいそうだね？』P99-P100

真理。ヴッとなった。

相手を憐れんでから発動する同情心は、やはりどこか醜い。みんなもっと深い慈愛を他人に求めているし、自分にも深い慈愛が芽生える可能性を信じている。
困っている人はいても、かわいそうな人なんて一人もいない。

『かわいそうだね？』P153

はい、ここマーカー。絶対にマーカー引くところ。

＊

続きまして、２作目の「亜美ちゃんは美人」。

高校生の頃から亜美ちゃんの隣にいたさかきちゃん目線で描かれる。

読了後、亜美ちゃんを抱きしめたくなった。つれなくされないと愛せないなんて、あまりにも切ない。

スクールカーストとか女子の仲良しグループとか、懐かしすぎてうわあーてなった。考え出したら止まらなくなりそうなので割愛。

それはそうと、亜美ちゃんが惚れ込んだ崇志という男性がめちゃくちゃツボだった。いや絶対に関わりたくないタイプなんだけど、物語で見るには良い。

「さすがのおれも自然の浄化に頼らないと、やっていけない。大地のパワーとパワーストーンの力に頼って、なんとか保ってる」とかいう発言には深夜に声出して笑った。面白すぎる。どうかビッグウェイブに乗れますように。

＊

春に咲くすべての花は、亜美ちゃんの形容詞だ。重そうなほど枝に花を咲かせている木蓮の木、ゆっくりと惜しみなく美をふりまいて、香り立つ。

『かわいそうだね？』P254

こんな風に表現される亜美ちゃんも、こんな描写を書ける綿矢さんも凄い。ここまで胸が詰まるような苦しさがあったけど、この辺りの文章で一気に心が癒された。素晴らしいなー。

＊

新年１冊目から素晴らしき作品に出会えて嬉しい。幸せ。最高。

今年は何冊読めるかなあ。ワクワク。特に目標冊数は決めず、伸び伸びと（？）本を読めたらいいなあと。

では！