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 ご 挨 拶 ── Apple Musicを中心に

 日頃「忙しない」などと半ば口癖が如くに愚痴を垂れるも、 時には無聊を託つ身の慰めにて、およそ三月余りの長期にわたりApple Musicへせっせと貢いでは、折節好むところの音楽を愉しみつ今へと至る。僕の場合、選びしプランは「Apple One」ゆえ一月毎に¥1,200 ─ を費えとして要する。それでも所謂「円盤」に換算するなら、格安中古品でも精々4〜5枚購えるか否か。 それが95日で1,600タイトルを超えているのだから、最早「元を取る」どころの話ではなかろう。 正に「Apple様様」と称えて然るべきであろうや。
 さて、斯様にして数多なる楽曲へと満足をし味わい尽くす日々を送る訳だが、折角ゆえさ、 諸兄姉へも囁かながらシェアしたいとの思いすら昂じて已まぬは、 これも人情というところかしら。
 ああ、そうよ今年も残すところ僅か七週間ばかり。いつかしらか「年末」の靴音も、漸くにコツコツと耳を掠め始めているのだから、ベートーヴェンの「第九」を俎上に徒然なるがままに筆を走らせようかと思うてみる。

私薦ベートーヴェン「第九」三題

 遡ること三年ほど前 ── ベートーヴェン・イヤーたる2020年、そんなアニヴァーサリーを前に、興味深く、しかも燦然と輝くディスク三タイトルが収録・リリースされている。
 先ずは以下に各三タイトルを列挙しよう。
● P. エラス=カサド&フライブルク・バロック管弦楽団(ハルモニア・ムンディ)
●鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン(BIS)
●Y. ネゼ=セガン&ヨーロッパ室内管弦楽団(ドイッチェ・グラモフォン)
 前二者はピリオド・スタイル=古楽器オーケストラによるもので、ピッチはいずれもA=438hz、ネゼ=セガン盤はモダーン楽器(ただしトランペットとティンパニはピリオド)、ピッチはA=442hz。
 オーケストラ編成はいずれも標準的な対向配置である。
 と⋯⋯これにて一旦擱筆としようか。続きは日を改めてお送りしたい。目論見としては、夫々三タイトルを三回に分け隔てつ詳述するつもりである。が⋯⋯各盤の枢要たるべきチャームポイントとなろう「版」の問題を軸に簡略ながら示唆して終えたい。
 カサド盤はベーレンライターのニュー・エディションを定本に、兎角「悪筆極まりない」ベートーヴェンの手稿譜をもアナライズしての成果を盛り込みつ、彼が指定した精度に劣るメトロノーム記号そのままに、ほぼイン・テンポながら稠密なアンサンブルで壮大な世界観を体現。


 鈴木盤は最新のヘンレ・エディション(ピアノなど楽器を嗜む向きには名高い「ヘンレ原典版」でお馴染みの版元)に忠実なサウンドを堪能し得る。こちらも緻密にして、実に端正な名演である。
 ネゼ=セガン盤はヘンレ版をベースに、一部ベーレンライター&ブライトコプフ新版に加え、 これまたベートーヴェンの殴り書き同然たるパルティトゥーアを丁寧に解析・反映するのみならず、後日微細に述べるが、モダーン楽器(殊に弦楽器)の特性を「封殺」する大胆な解釈が聴きどころである。

 とまれ初回の本稿はこれにて仕舞い。当noteの方向性としては、Apple Musicよりダウンロードしたタイトルの数々に留まらず、酒肴とか、男と女の諸々などをも含め、気ままに綴る心算である。何卒よしなに。




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