「オケバトル!」 56. 抑えてこその魔法の瞬間
56.抑えてこその魔法の瞬間
しばしの沈黙の後、有出絃人は最低限の注意点から、とりあえず片付けていくことにした。
「『ビゼーのB』、速くなりすぎないで。むしろ落ち着いて、ゆっくり気味に。ピアノ三つですよ! 弦は八小節間はずっとアップで、そっといきましょう。タンブーランに至ってはピアノ四つなのだから、最初のうちは極力抑えて。その上で正確にクレッシェンドしていって、『マスネM』の大合奏でフォルテ三つになってからは、タンブーラン、アクセントなしですよ。ただひたすら無心で叩くだ