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原型師インタビュー・Knead/木村和宏

「原型師」にもっと光を。
その声の下に立ち上がったプロジェクト、 MINAMOTO


今回は「MINAMOTO×絵師100人展」で絵師とコラボをした原型師へインタビュー。


今回インタビューに回答してくれたのはフィギュアメーカー 株式会社Kneadのモデリング担当様、そしてディレクションを担当した「木村和宏」様。

木村和宏 様@knead_inc
フィギュアメーカー 株式会社Knead 代表取締役社長


――原型師になろうと思ったきっかけを教えてください

(Kneadモデリング担当様)
大学生の頃、3Dプリンターを使用して製作を行っていました。
当時はCADソフトを使用して家具のパーツや雑貨などのモデリングをしていたのですが、他にどのようなものの製作に3Dプリンターが使用されているのか調べて行く中でkフィギュア製作をする『デジタル原型師』という職業を知りました。キャラクターのモデリングはやったことがなかったので一度挑戦してみようと思いデジタル造形を始めました。

書籍を見ながらモデリングをはじめたのですが、キャラクターをモデリングする難しさと面白さに魅了されていき、仕事としてフィギュアの造形をしたいと考え原型師になりたいと思うようになりました。

――キャラクターのモデリングの魅力について教えてください

(木村様)
キャラクターのモデリングでの表現は形状だけではなく、動きや表情など「三次元だけど四次元」のような「あるどこかの瞬間を切り取った」ような表現が特有のものだと思います。形状による機能性以外にも、別の魅力がありますね。


――原型師のお仕事で楽しさや、やりがいを感じる瞬間について教えてください

(Kneadモデリング担当様)
担当させていただくキャラクターを通して様々な作品を知ることができるのがとても楽しいです。また、仕事をしていく中で新しい技術を覚えてできることが増えたり、モデリングのスピードが早くなったりと自身の成長を実感できることに仕事の楽しさを感じることができます。

担当した案件の製品のデコマス(デコレーションマスターのこと。彩色見本が施されたデコマスをモデルに量産化が進められる)が発表され、色のついた状態のものを見たときは本当に嬉しいです。製作中は悩むことも多く、大変だと感じることもありますが、自分が製作したものが商品になって発売され、購入してくださった方の手もとに届くと思うと非常にやりがいを感じます。

――原型師を目指している人に対して、実際にプロとして活躍なさっている視点から仕事の魅力を伝えるとしたらどんなことが挙げられますか

(木村様)
商業原型師は原案があるイラストを立体化する仕事が多いです。その際、単にイラストやキャラクターに似せるだけではなく、そのキャラクターが「もし立体になって動いていたら」などと考えます。

イラストは平面なので見えない部分がありますが、立体にしたとき360度どこから見ても魅力的なポージングになるよう、こだわることができるのが原型師のよいところだと思っています。将来、原型師になられた方はそのようなところに力を入れて制作してもらえると、魅力的なキャラクターのフィギュアを作れる原型師になれるのではないかと思います。


――ご自身の作品に通ずるアピールポイントやこだわり・特徴を教えてください

(Kneadモデリング担当様)
イラストの印象を元にポーズの意図を考えながら、製作するキャラクターの魅力を表現できるように意識しています。顔の製作はメインの角度からの見た目をイラストに似せた上で、他角度から見たらそれ以上に魅力的になるようにしたいと思っています。

ポーズをつける際は、前後の流れを考えつつ骨格や筋肉の流れなど、イラストの再現を意識しながらリアルな表現を取り入れ、立体として見た際に説得力のある造形ができるよう常に意識しています。
指先など細部の表現には実感のある動きをつけ、単調な表現になってしまわないようにすることにこだわってモデリングをしています。

――「前後の流れを考えつつ」

(木村様)
会社の方針として「四次元」つまり「時間をプラスして造形しましょう」ということを言っています。頂いたイラストではキャラクターのポージングが決まっています。では、そのキャラクターが1秒前には何を思ってどう動いていたのか、1秒後ではどうかというところまで考えないと生き生きとした瞬間を切り取ることができないのです。

時間の前後を考えることで、そのキャラクターの感情や意思などを自然と考えることができます。

――「実感のある動き」

(木村様)
フィギュアはアニメーションと違って、時間の流れやセリフ・表情の動きなどがなく、一瞬を切り取った立体的な写真なので表現できるパーツが少ないです。そこで、表情の他にとても大事なのが手足の指先など末端の部分です。末端にも感情は現れます。フラダンスやタイの伝統舞踊などは指先の動きにこだわっていますが、フィギュアと同じでセリフがない分、表情だけではなく指先まで表現をつけているんですよね。それを我々も意識して原型制作をしています。

今回のコラボでは「イラストを元に自由にしていい」ということでした。商業原型を仕事にしている弊社として、皆さんに何を見せたいかと考えたとき「フィギュアはチームで作っている」ということを伝えたいと思いました。普段我々がやっていることを見ていただきたいと思ったので、特別なアレンジはせず、頂いたイラストを「弊社が“仕事”として作ったらどうなるか」というストレートなテーマの下、チームで制作させていただきました。



Knead社が共作のターンを担当した【九尾の傍観者】

――今回共作のターンを担当した【九尾の傍観者】についての紹介、見どころを教えてください


(Kneadモデリング担当様)
今回担当させていただいた『九尾の傍観者』ですが、イラストがとても可愛かったので楽しく製作することができました。動物要素を含んだキャラクターを製作するのが初めてだったので、九尾の尻尾や狐耳の毛並みのふわふわした感じをどうやって表現するか、色々と試行錯誤をしながらモデリングしました。

きょとんとした表情や足先の表現など、イラストから感じられる魅力的な点を表現しつつ、着物のディテールなど服飾の表現は、実際の写真も参考にモデリングしたので特に見ていただきたいです。

――「実際の写真も参考に」イラストに描かれてない部分の制作について

リアルなものをどこまでデフォルメするかという点ですね。まずイラストになっている段階で情報量がデフォルメされていますが、それを立体にする際には立体としてもどうデフォルメするかを考えます。元になるものはリアルなものなので、写真を参考したり、実際に服や布を買ってみたり、皺がどう出るのか検証してみることもあります。過去には着付けした人を3Dスキャンしたこともあります。

リアルとイラストの1番よい中間地点を目指し、情報をどこまで間引くかを考えます。イラストよりは情報量を多く、且つキャラクターの造形として違和感のないように。立体にしたときのリアル感を上手いバランスで表現するというのは原型師の腕によるところだと思います。

オリジナル制作のターンはクリエイターとして、共作のターンは「原型師」(商業原型師)としてやってみました。そこのコントラストも見てもらえると、深読みしていただける方には伝わるのではないかと思います。



Knead社がオリジナル制作のターンを担当した【軌跡と交錯】

――ご自身の原型作品オリジナル制作のターンを担当した【軌跡と交錯】が、絵師とのコラボでどのようなものになることを期待しているか教えてください


(Kneadモデリング担当様)
【九尾の傍観者】では第一線で活躍されている絵師さんの描かれたイラストをもとに想像を膨らませて、モデリングするのはとても楽しく、創作意欲が高まりました。私が刺激を受けたように、今回モデリングした【軌跡と交錯】が絵師さんの創作意欲を刺激できると非常にうれしいです。

今回のようなコラボでお互いに創作意欲を刺激し、高めていくことでさらに良いものが生み出せるようなものになっていくことを期待しています。

――ご自身の作品がイラストになる、ということに対してはどのようなお気持ちですか

(木村様)
「原型師を擬人化したキャラクターがポータルリングの向こうのイラストレーターさんと交錯する」というイメージで作らせていただいたので、本当に「好きなようにしてください」という気持ちです。

原型をアレンジしたイラストにするのもよいし、リングの反対側にあるイラストレーターさんを擬人化したキャラクターを描いていただいてもよいし、かなり自由度を高めて制作したので、どのような作品をイラストレーターさんが仕上げてくれるのかと考えると、期待というよりも嬉しいですね。

イラストからフィギュアになることはあっても、フィギュアからイラストになることは普段の仕事だとあまりないので楽しみにしています。


以上、株式会社Kneadのモデリング担当様と木村和宏様のインタビューをお届けしました。

「絵師100人展×MINAMOTO」コラボ作品の展示は2022年8月19日(金)~21日(日)に東京・秋葉原のAKIHABARAゲーマーズ本店7Fで展示予定。期間限定の展示となるので、お見逃しなく!

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