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高額の保証金を払えば家賃は不要。韓国ならではの賃貸システム「チョンセ」って?(『賢い医師生活』について#3)

 ドラマ『賢い医師生活』について、3回目です。今回は韓国の不動産の賃貸契約事情。韓国の住居や店舗の賃貸契約は日本とは異なり、韓国ドラマでもよく賃料や保証金の話が出てくるので気になっている人も多いのではないでしょうか。

 第5話で、ユルジュ病院の胸部外科チーフレジデント、周囲からはト先生と呼ばれているジェハク(チョン・ムンソン)のマンション契約の話が出てきます。

 ジェハクはかなりの倹約家で、後輩にごはんをおごるとなると「歴史的な瞬間」と、いじられてしまうようなキャラクターです。

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ドラマ『賢い医師生活』からのキャプチャー画面。第5話で貯金が1億ウォンを超えたジェハク。

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ドラマ『賢い医師生活』からキャプチャー画面。ジェハクは貯金1億ウォン達成記念に後輩に食事をおごりつつ、マンションゲットを自慢する。ところが、倹約家らしい軽食で後輩にがっかりされる。

 こつこつと夫婦共働きで1億ウォンを貯めたジェハクは、銀行からの融資も足した2億ウォンをマンションの保証金にして、これからは家賃を払わずに住む権利を得たということで、喜んでいました。これをチョンセ契約といいます。

 韓国の賃貸は「傳貰(チョンセ 전세)」「ハンチョンセ(半傳貰 반전세)」 「月貰(ウォルセ 월세)」の3種類に大きく分けられます。

「チョンセ」は契約時に一定金額を保証金として預け、毎月の賃料は払わず家を借りるシステムで、契約期間は2年です。契約を延長する場合、更新料は発生しませんが、契約更新時は貸主が保証金を値上げするのが一般的です。保証金は契約が終わって家を出るときに全額戻ってきます。貸主は保証金を銀行などで運用して利益をあげるのですが、最近韓国でも金利が下がり気味で、チョンセを希望する貸主は減少傾向です。2020年7月31日に新しい不動産の法律が執行され、2年の契約期間終了後特別な理由がない限りさらに2年の契約延長が保障されるようになり、延長時の値上げ幅も5%に制限されることになりました。

「ハンチョンセ」はチョンセの保証金を半分にして残りの分は家賃として毎月一定額を払い、家を出るとき保証金は戻ってきます。

「ウォルセ」は日本の賃貸と同じように、保証金を預けて毎月家賃を払います。保証金も戻りますが、毎月払う家賃は割高になります。

 さて、気になるチョンセの保証金ですが、ソウルの平均は3〜4億ウォン。チョンセシステムが根付いている韓国では、家賃として毎月払うお金をもったいないと思う人が多く、銀行からの融資を受けてでもチョンセで入居することを目指し、保証金が用意できない場合にハンチョンセやウォルセの契約をするのが一般的です。また韓国でいうアパートは家族用住居のマンションタイプのもので、チョンセで借りる人が多く、一人暮らしや新婚さんが多く使う「オフィステル」と呼ばれるワンルームは、厳しい書類審査はなく、ハンチョンセやウォルセで借りる人が多いです。

 ドラマでジェハクが2億ウォンのチョンセ契約を結んだととても喜んでいたのは、これからは毎月払っていた家賃を払わなくてよくなり、銀行の融資があるもののチョンセ保証金はあとで戻ってくるからなのです。それがじつは詐欺だったという悲しいエピソードでした。

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ドラマ『賢い医師生活』からのキャプチャー画面。第7話のラストで大家に保証金が渡されていないことが発覚する。

 韓国のチョンセシステムを日本人の友だちに教えると、本当に保証金が戻ってくるのかと必ず聞かれます。ドラマなどでも詐欺のシーンがあり不安に思う人が多いと思います。チョンセ詐欺は実際にはそうありませんが、まったくないとも言えないので契約時は注意しないといけません。このチョンセシステムがあるのは世界で韓国だけとも言われます。韓国ならではの賃貸文化でしょう。


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