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【読書記録】内田也哉子/BLANK PAGE

也哉子さんがご結婚された頃のニュースをなんとなく、うっすらと覚えている。
「もっくん」として人気だった俳優と結婚した人。
それは、樹木希林さんと内田裕也さんの一人娘。
特別な人なんだろうなあ。
へえ〜19歳。
すごいなあ〜。
そんな風に思っていた遠い日。

樹木希林と内田裕也の娘。
そして本木雅弘の結婚相手。
そうしたフィルターを通して見られてきたという彼女に、その自覚は痛く深く根差している。
そうか、根差しているのか。
けれど、彼女の文章は、どこか静かで落ち着いていて、凛としている。
惑っている、と言葉で言っていてもそうは思えないし、葛藤している、と言ってもそうは聞こえない。
冷静に、自身の置かれた環境を見つめているように感じる。
彼女の文章を読んだのは、3冊目。
「ペーパームービー」と、中野信子さんとの対談「なんで家族を続けるの?」
「ペーパームービー」の時点で彼女は結婚したばかりの19歳。
19歳とは思えない大人びた視点に驚いた。

樹木希林と内田裕也という大きな存在を失い、空っぽになったと彼女は言う。
ずっと二人の存在に苦しめられてきた、と。
けれど、彼女が出会っていく人々と交わす言葉の数々は、
決して空っぽではなく、彼女自身の存在がきちんと根を下ろし、
「内田也哉子」さんという一人の素敵な女性の存在を世に知らしめる。
樹木希林さんという女優さんは、確かに大きな存在で、
本木雅弘という俳優も確かに役者として唯一無二である。
けれど、彼女自身もまたこの上なく才能に溢れていることが伝わる。
誰かの〇〇では、決してない。

彼女の書く文章が好きだ。
幼い頃はインターナショナルスクールに通い、海外での生活も長い彼女が
選ぶ日本語は、その渇望からなのか、逆に美しい。
こういう感じ、宇多田ヒカルにも感じる。
どうしてだろう。英語も話せて選ぶ日本語も美しいなんて、嫉妬する。
こういう日本語の使い方ってあるんだ、と勉強になる。

誰かの〇〇だから文章の依頼が来たのではなく、彼女自身が素晴らしいから、
仕事の依頼が来たのだとわかる。

彼女みたいな文章、好きだな。


「空っぽ」になったと言う彼女が、生前のご両親とお付き合いのあった人や
そうでない人、繋がりのあるような人、または彼女がご両親の影を見る人、会ってみたい人などに、一人で会いにいく。
谷川俊太郎さんや、小泉今日子さん、ヤマザキマリさん、横尾忠則さん、桐島かれんさん、石内都さん、窪島誠一郎さんなどなどなどなど…
知っている人や、私の知らない人もいた。
共感できる人も、できない人もいた。
意外な一面を見せる人もいた。

知っているつもりでいた人も、誰かの視点を介するとこんなふうに見えるものなんだ。
いや、也哉子さんの視点だからかもしれない。
これまで全く興味のなかった人にも、急にスポットライトが当たったりして
面白い。

彼女はきっと、これからもっとたくさんの文章を書くだろう。
私はもっとたくさん、彼女の文章が読みたい。
もっともっとたくさん書いてほしい。
いちファンからのお願いです。

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