映画「30S」配信トークショー

8/14から8/17まで、司会とキャストの日替わりゲストによるオンライントークショーが開催された。  


■8/14配信トークショー

*司会:佐藤監督 
*ゲスト:安西夕美役 茜屋日海夏さん

姉さん女房

 トークショーで明らかになったのは、夕美の年齢であった。31才。タケルより一つ年上だった。 3年前から同棲中で、朝ごはんの支度もタケルがやっていたシーンから、夕美に気を使っていることは窺えた。

タケルくんの裏話

 脚本に書かれているセリフを使わずに、設定だけ頭に入れて行われたエチュードは合コン設定だった。真田くんが盛り上げ役、夕美がいいパスを何度も出して告白を待つも、ことごとく外すタケルくんであったらしい。その場に居る全員がここだというタイミングにも、なぜか、言わない。その姿が想像できた。試写会や舞台挨拶でお見掛けする小野さんは、おっとりとして天然が入っている印象だったから。

タケルはいつ妊娠に気付いたのか

 茜屋さんは「夕美は妊娠がわかったことをLINEなどで伝えていないだろう」と言っていた。30才の誕生日に一日中留守にするタケルの帰りを信じて、じっと待つ。そして帰ってきたタケルを優しく迎えてあげる夕美だからだ。
「オーディションではタケルを責める演技をする方が多い中、茜屋さんは、受け入れ見守る演技をしていたのが良かった」と監督。茜屋さんも、役の解釈が合っていたことを喜んでおられた。
「タケルがいつ妊娠を知ったのか」これは考察ポイントであるらしい。

■8/15配信トークショー

*司会:佐藤監督 
*ゲスト:緒方充希役 難波なうさん、取手隆​役 ラブ守永さん

本当は一人の役だった

 緒方興信所の探偵コンビは、本当は一人の予定だったが、オーディションでお二人を見てコンビでイケる!と思ったらしい。脚本も担当した監督はセリフを二人用に書き直すうちに楽しくなっちゃった!と笑っていた。
 特に演技プランはなかったとおっしゃる二人。監督からも特に何の注文もなかったが、撮影現場で内容はどんどん膨らんで、結果的に長めの味のあるシーンとなった。ラブさんは、現場の空気が柔らかかったので、こういうのどうですか?と言いやすく、ミルクのくだりは、アドリブだったそうである。

絶妙なコンビ

 心ここに在らずで一心にメニューを見つめる取手だったが、あの時取手は本当はコーヒーフロートを頼みたかったらしい。仕事中なので譲歩してカフェラテを注文したのに、緒方が勝手に注文するのは「アイスコーヒー3つ」。せめてミルクを多めにしようと頼んだのに、店員さんが持ってきたのは、ちっちゃい容器に並々持ってくるだけだったので、つい出た呟きが「ちょっと少ないな」。撮影段階では監督も気付かなかったそう。
 打ち合わせ通りに全く動かない取手に殺気立つ緒方に対し、取手は全く意に介さず、カオルが帰った後は何食べようかなということで頭がいっぱいだった。取手は仕事は全くできないが、人間力で雇われているのだ。

オンナ感を出す緒方

 難波さんの実年齢は27ということだが、映画の中ではとても大人っぽく見える。足元は実は真っ赤なピンヒールを履いていたらしい。真っ赤な口紅を付け、アイスコーヒーを飲んだ際にグラスに付いた口紅を拭って見せるのは、実は中性的なカオルに女子力で圧をかけようとしているのだそうだ。

お二人の好きなシーン

 ラブさんが上げたのは、「蔵野とタケルのシーン」だった。難波さんもお気に入りのシーンらしい。
 夢を追い続けている蔵野と、夢半ばで諦めて別の人生を歩むタケルが居酒屋で酒を酌み交わす。ラブさんも友人と飲むとき、実際にああいう会話になるとおっしゃっていた。その後蔵野の家へ泊めてもらうことになるが、蔵野はかつて集合場所だった倉庫でまだ生活していた。変わらない室内の様子を見て思わず涙ぐむタケル。こちらも涙を誘われてしまうシーンだ。

 難波さんは、8月13日、実は客席に紛れて初めて映画全体を観たらしい。そして好きなシーンに「カオルが御手洗を追うシーン」をあげた。「あの時の御手洗は実在していないのではないかと思った」。

 私も同じ感想を抱いたが、じゃあカオルがその前に電話で話したのは誰なの?ということになり、辻褄が合わなくなってしまうのだ。

 さらに緒方さんは、「興信所に依頼をしてきたのが御手洗だったのではないか」と思えてきたそうだ。いくらでも興信所のほうで御手洗の行方を突き止めることが可能なのに、わざわざカオルを巻き込むきっかけを作っているのではないかと。撮影時は普通に撮ってしまったが、この考察を踏まえて再撮したい!とおっしゃっていた。

 そうなると、そもそも最初に「約束守れなくてごめんな」とタケルとレンカにメッセージを送ったのも御手洗だった?と何もかもが怪しく見えてくるのだ。

「月」が好きな難波さん

難波さんによる、月と地球と太陽の関係の話が面白かった。
月=御手洗
地球からは反対側の月の姿は見えない。日が出ている時に月は見えない。満ち欠けしてもどんな姿でも愛されている。
太陽=タケル
一本筋で、タケルの光で皆が輝いている。でも近付きすぎると燃える
地球=蓮香
お茶目で人間味のある地球

薫のノート

 中身は見せてもらえなかったが、映画のタイトルと似顔絵の落書きが書いてある裏表紙だけ公開された。

真田Pへのお願い

 予想をはるかに上回り面白くなってしまった緒方興信所コンビとカオルの面会シーン。このシーンからスピンオフでも一本作ってほしいと配信でも盛り上がる。難波さんも「真田P~」と画面越しに呼びかけていた。

■8/16配信トークショー

*司会:佐藤監督 
*ゲスト:御手洗薫役 新田桃子さん、みさき役 野元空さん 

薫とみさきの出会い

 顔合わせの時に、2人で話し合って背景を設定した。薫の背景をすべて知っている事を考えると、高校の時からの友達にしようと決めた。周りに壁を作っている薫が、唯一心を許して何でも言い合える友達がみさきである。みさきは薫に振り回されるもなんだかんだ付き合ってあげる優しい性格である。

オーディションから相性が良かった

 オーディションの組が一緒で、その時からお互いやりやすかった。エチュードで監督が決めた設定は、トイレでハンカチを拾ってもらうがそれは自分の物なのに自分じゃないと言う設定。

印象に残っているシーン

 大勢が集う中、みさきが御手洗の仲間である直子と待ち合わせし後を追うシーンは、実際に二人は電話で会話しながら行われていたそうである。スタッフもエキストラに入って何役もこなす、大掛かりで一番大変な撮影だったそうだ。 
 みさきがバイトで不在で、薫が部屋の前で待たされる場面、みさきがビニール傘にいたずらをするのはアドリブであった。
 映画内でよく食べているみさき。張り込み中あんぱんと牛乳を食べているが、実際にお腹が空いていたのでしっかり味わった。みさきの住まいの屋上ではパピコを食べる。すぐ溶けるので何個も食べた。夕日の一番いい時間を待っての撮影だった。

薫の持ち物

 スーツケースは死ぬほど重かった。リュックの中身も薫が持っていそうな物が詰まっていて実際に重くて大変だった。薫ノートは、表紙が赤なところが真田くんチョイスかなと思った。この日の配信では、真田くん直筆による「約束は誕生日」を何度も書き連ねてあるページと、シーンの説明が入ったページを見せてくれた。

御手洗はどうなったと思いますか?

新田さん タケルにギター渡すときに甲は居なくなったんじゃないかと思った。焚き火は、送り火のようなもの。友引じゃないけど、甲は意志の弱い人を連れて行こうと試し、タケルの意思を確認して、連れていっちゃいけないと思った。薫も甲が居なくなったととらえて、自分の心の中にいれば大丈夫だと思った。
野元さん 御手洗甲の存在自体が不思議すぎて掴めない。いろんな人が関わっているのに、誰も掴めていない。タケルやレンカの思い出の中に、薫の中に強烈な印象を残しているところが太陽みたい。存在していたのかさえ疑わしく、誰かの夢の中だったんじゃないかとすら思えると話した。

台本を初めて読んだ時の感想

新田さん オーディションの時から台本が開示されているのは珍しく、気持ちを入れやすかった。今後の人生を考える転換期に受けたので、絶対受かりたいと思った。
野元さん オーディションは、薫とみさき役一緒に行われたので、決定するまでどちらをやるかわからなかった。30才に向かう中で出会うべき作品だった。

オレンジスパイニクラブの「パピコ」のMVに出ている新田桃子さんがパピコの話をしている、貴重な配信でした。

■8/17配信トークショー

*司会:深澤P 
*ゲスト:三山直子役 伴優香さん、取手隆役 ラブ守永さん、矢崎悦男約 内藤聖羽さん

世にも奇妙な物語のストーリーテラーのようにオープニングにだけ登場した佐藤監督。今日はBARのマスター役を務めた。

短いシーンでインパクトを残すキャラ作りのコツ

 台本に設定は載っていないので、自分の中でサイドストーリーを補ってふくらませなければならない。
 矢崎は、台本では高圧的で乱暴なヤクザみたいなキャラであった。監督や真田Pが面白い道化役を求めていることはわかったので、裏切ってやろうと思った。薫も心を開かない役なので、薫をもっと喋りにくくしてやろうと気持ち悪い役作りをした。矢崎事務所の部屋の様子もキャラに合わせ、狭い階段に収まる登場シーンもあのキャラだからこそ生まれた。内藤さんは、役を超えてきたことを深澤P。
 それぞれが短いシーンにも余韻を残そうと努めてくれたからこそ、面白くなった。

『御手洗と付き合ってると思っている女』

 配信トークショーで明かされた裏話の中で一番の衝撃だったと思う。「三山直子、御手洗と付き合ってると思っている女だった!」付き合ってるのではない「付き合ってると思っている」、一方的な片想いだ。三山は御手洗の単なる詐欺師仲間じゃなかったのだ。御手洗の夢を心底信じて応援する健気な女だった。

【伴さんの考えたサイドストーリー】
御手洗とは飲み会で出会い、人たらしの御手洗に惹かれ、「この人なら本当に月に行くかもしれない」と純粋に御手洗の夢を応援している。御手洗こそ正義と思い込んでいる女。でも、御手洗とはこの二週間連絡が取れず、安否を心配している。

 そんなところに薫が乗り込んできたのだ。連絡するように脅されるが、このところ電話しても御手洗はずっと出なかったし、どうせ出ないだろうと思いながらも電話した。しかし薫が甲と話をしている様子を見て内心焦るが、虚勢を張る。薫にはそのスマホをゴミ箱に捨てられてしまう。このスマホをゴミ箱に捨てるシーンは、監督が考えたとドヤ顔で説明。薫はスマホを割りにいこうとしている顔付きをしている。捨てられた後の直子の表情に人間味が出ているらしい。
 伴さんは、真田くんと特に役の設定を話し合わなかった。それは三山がただ一方的に御手洗を好きな片想いの役だったから。

新田さん

 みさきだけにしか心を開かない周囲に壁を作るキャラ設定だったため、顔合わせの日はあえて参加してもらわず、現場で初めて会うようにした。伴さんと新田さんは前の事務所が同じで実は顔見知り。伴さんは、初共演であったが苦楽を共にする仲だからこそ距離感が測りやすかったそうである。

真田Pへの想い

伴さん 伴さんが現場に入って驚いたのは、青春時代テレビを彩っていた人が、率先して文化祭のシーンの飾りつけに励んでいる姿だった。御手洗は、人たらし。真田さんそのもの御手洗は監督が真田くんに充てて書いた役なのだそうだ。
ラブさん 顔合わせの時ストレンジャーシングスのTシャツを着ていたら話しかけてくれて、「めっちゃいいですよね~」と映画の話で盛り上がった。細かいところに気付いて率先して話しかけてくれる。真田Pが「自分は出ないでいい」と言っていたのも本音だろう。真田Pが映画「30S」にかける情熱を間近に見ていると、よりがんばろうと思える。
内藤さん 試写会後の飲み会で、お疲れさまです~と楽しくわいわい移動する皆を横目に一人微動だにせず飲んでいたら、真田くんがパーッと近寄ってきてくれた。オーディションで選んでくれてこちらがありがとうなのに、「参加してくれてありがとうございます」と言ってくれた。

明日から始まる劇場トークショーへ向けて

 真田Pには「さらに10年後、この座組で〇〇しよう」と言ってほしい。
映画「30S」ができるまでのストーリーも見たい。映画を学んだ恩師と一緒に映画を作るなんて、それ自体映画になるような題材である。

 真田くんの情熱に賛同し、監督、スタッフ、キャスト一同一丸となって夢中で育てた結晶がこの映画「30S」。ぜひ劇場で見てください。