今さら、TRICKシリーズを見たよ

TRICKを知らずしてどうやってこれまで生きてきたのだろう

それが、TRICKすべてを鑑賞し終えての感想だ。
いや、もちろんこのようなタイトルのドラマが放映されていたことは知っていたし、シリーズ化して長いこと続いていたことも、なんなら実は最初の劇場版だけは一度見たことさえあったのだ。しかしドラマ版は一切見たことがなかったので、劇場版内で繰り広げられるお約束がすべて白々しく映り、ただただ寒々と鑑賞を終えた記憶があって、正直あまり良い印象を持っていなかった。

次何見よ~かな~といつものごとくアマプラからおすすめされるラインナップをつらつらと眺めていたある日、これでもかと並ぶTRICKシリーズにチャレンジしてみようかなと軽い気持ちで思い立ったのが5月の半ば。どうせなら放送の順番通りに見てやろうと調べると、なんとドラマ版は3シリーズ、劇場版は4本、スペシャルドラマが3本あってさらにはスピンオフ作品『警部補 矢部謙三』まであるということがわかり、改めてその人気ぶりに圧倒された。
2000年に放送開始された第一シリーズから、急いでUネクストに加入しスピンオフ作品『警部補 矢部謙三』第二シリーズを経て、2014年公開劇場版ラストステージまで、14年にも渡るシリーズを連夜一気に観賞した。びっくりするほどあっという間に見終わった。

そして今、涙が止まらない。

思わずまたTRICK1の『母の泉』を見返してしまうくらいには、完走した現実を受け入れ難い。
TRICKワールドから抜け出したくない。

いやそれにしても、自分、何年遅れて生きてるんだろう。

世の中の人たちは、とっくの昔にこの過程を通り過ぎているというのに。

最後まで付き合う描写はなかった山田と上田、良かったな。

劇場版ラストステージのラスト、上田のいじらしさに涙が止まらない。
鬼束ちひろさんの『月光』をバックに迎えるエンディング、エンドロールのバックで僅かな望みを捨てず日付が変わるぎりぎりまで待ち続ける上田の様子と、シリーズ開始からの山田奈緒子の笑顔笑顔、また笑顔を振り返る映像が流れる。なにもう仲間由紀恵、可愛すぎ。

人気シリーズの終了にあたり、ラストも考え尽くされたと思うけど、ドラマの最初のエピソードに戻るのは良かったな。
記憶を失った山田奈緒子の思いの強さが起こした奇跡だと思った。記憶は失っても、今日ここに絶対に来なければいけない思いだけは強く残った。
霊能者である証拠かもしれない。記憶は失われたけど上田との約束を果たさなければならない強い思いに突き動かされて、上田の前に現れた姿、涙なしでは見られない。
上田は記憶はあるけれど、ここからまた再びドラマの始まりを予感させる。うらやましい。

いろいろ解釈があるTRICKだろうけれど、上田、山田奈緒子に一目ぼれだったのではないかと私は思った。

あと私はTRICK3のラストがたまらなく好きだ。
上田のプロポーズ(たぶん)後、プロポーズに気付き上田を追って海辺に来るも、もう島を後にしたことがわかり座り込む奈緒子。しかし背後の岸壁に焦点が合っていくとそこには砂に埋もれた上田の姿が。からの奈緒子との再会はドラマの最終シーンとして最高傑作だった。

TRICK2終わりの劇場版のお知らせもよかったな。これリアルタイムで見て発狂したかった。

もう一度シリーズの最初からTRICKし始めようか迷うところだ。
今度はじっくり時間をかけながらじわじわと楽しみたい。

『警部補 矢部謙三』の第三シリーズはどこかで見られるのかな。見られるものなら見たい。
そして、はやみねかおるさんの書いたオリジナル作品『帰天城の謎 ~TRICK 青春版~』もどうにか手に入れて読んでみたいと思っている。