夏になったら
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誰も食べないモンブラン
どんな気持ちで買ってきたのだろう
最後に向き合って話したのはいつだった
会社に行くのを阻止するためにお腹にしがみつきながら寝ていたあの頃
年頃なのでもうくっついたりはしない
夏になったらペットも連れて家を出よう
けれどこれから離れたとしても寂しくないようにたまには顔を見にくるよ
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机の上に冷たい届書
現実味を帯びた君の瞳
君にも 子ども達にも できることなら側にいてほしい
何のために走ってきたのか
巻き返そうとそれなりに頑張る日々
たまにはズル休みで気分を保とう
二階建てにひとりぼっちの僕
テレビもつけずに飲むビール
飲み過ぎと怒る声が聞こえた気がした
子どもたちの寝顔 君の笑顔 犬が走り回る音が遠くなり
換気扇の下で煙上げる君を見た気がした
起きてしまったら現実に戻る
夢の中でだけ息ができる僕に どうか朝が来ませんように
みなみ まる
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