“The Woman” by Doris Lessing (10)

“The Woman” by Doris Lessing (10)
https://jp1lib.org/book/3902043/21ed13

 「そうです、手紙です。
彼女は私に感謝し、私は涙が出てきました。」

 感傷的なドイツ人の目に涙が溢れたと断言できたかもしれない。
フォースター大尉は目をそらした。
目を背けながら彼は「手紙にはなんて書いてあったんですか?」と神経質に聞いた。

 「彼女はどれほど彼女の夫のことが嫌いだったのか書いてありました。
彼女は彼女の両親を喜ばせる為に意に沿わない結婚をしたのでした。
当時は、そんなこともありました。
そして彼女は決して彼の子供を作らないと心に誓ったのでした。
しかし子供は欲しかった。」

 「何ですって!」と、大尉は叫んだ。
彼は今やテーブル越しに前にのり出して、全ての言葉に集中していた。

 この感情はヘル・ショルツにとっては歓迎されないものだった。
穏やかに、「そうです、そう言う事だったんです。それは私の幸運でした、私の友人よ」

 「それはいつのことでしたか?」と大尉は熱心に聞いた。

 「なんですって?」
 
 「それはいつのことでしたか?何年?」

 「何年? それが重要ですか?」
彼女は私にこの小さな休暇を彼女の健康状態が悪いと言う事を理由にお膳立てし、だから彼女は彼女が自分の子供の父親になって欲しい男を探すために独りで来ることができたのです。
彼女は私を選んだ。
私は彼女の選択だったのです。
そして今、彼女は私に感謝して、彼女の夫の元に帰っているのです。」
ヘル・ショルツは話すのを止めて、勝ち誇ってローザを見た。
ローザは動かなかった。
彼女は恐らくすべての言葉を聞き取る事が出来なかったはずはないだろう。
そしてかれは大尉の方を見た。
しかし大尉の顔は赤く動揺していた。


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