“Penguin Lost” by Andrey Kurkov (143)

“Penguin Lost” by Andrey Kurkov (143)
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彼らは海上に出てはいたがまだスプリット内にいる時、ホテルも古いベンツもまだ見えている時、ヴィクトルは携帯でリョーシャに電話をかけた。

「もう飽きたのか?」とリョーシャが聞いた。
「3月8日!国際婦人の日だ。俺から、ニーナとソニヤにおめでとう。」

「しまった!忘れてた。ありがとう。彼女らに電話するよ。」

「明日も俺に電話しろよ」

「通じれば電話します。」

船室に降りて彼はアフガンスポーツクラブのウェアを、ズボンに押し込んだチェックのネルのシャツに着替えた。
彼は今、母国からも過去からも、未来からも自由な、しかし運からは見放されていない、気分だった。

「子供たちのお土産?」と、ヴェスナがプマのプーさんのマグカップを見ながら訊いた。

ヴィクトルは頷いた。

「デッキに来て、案内するわ」
デッキでは彼女はミーシャを指さした、ミーシャは船の進路を見つめながらじっと舳先に立っていた。
船長を演じる小さな少年の様に。

「ウィー・ローリー・ロールの話しを知ってる?」と彼は聞いた。

「知ってるわ、学校で習った」

「じゃあ、それが今僕が感じていることなんだ」彼は憂鬱な顔で言った。
「お婆さんから離れ、狼から離れ、ウサギから離れ、問題はキツネに食べられようとしている事だ、ってこと?」

「そうね、分かるわ」と彼女は下に降りながら言った。

ムラディンとラドコがヨットを帆走させているのを見て、何故彼らは彼に手伝ってほしいと言わないのか、どれくらい長くかかるのだろうか、と考えた。

ミーシャはいつでも南極が見えるのではないかと期待しているかのように、どうしても甲板に立ち続けた。

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