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“The Pilot’s Wife” by Anita Shreve (75)

“The Pilot’s Wife” by Anita Shreve (75)
 
 
車の中はものすごく冷たかった。
キャサリンは手袋を忘れて急いで家を出たので、ハンドルを握っているのがやっとだった。
外はどれくらい寒いのかしら、と思った。
マイナス10℃? マイナス7℃? それくらい寒ければ大差ないわね、と思った。
彼女は、暖房が効き始めるまで、座席の後ろにも、何にもさらわないようにして、前屈みになり肩に力が入るのを感じた。
 
 ロバートの知らせで起こされて、彼はキャサリンにそれを絶対に信じないようにと強く言ったが、キャサリンはマティーと一緒にいたいと思っただけだった。
キャサリンは階段の下に立って、ロバートの顔を見て、娘に会いたいという気持ちが彼女を圧倒し、まるで水が瓶に流れ込むように素早く彼女を満たしてしまった。
まだ眠った時の服のままだったが、ロバートのそばを通り抜け、ほとんど同時にパーカーにそでを通し、ブーツをはき、裏口のカギを外した。
門に向かって走っている数人の男たちを追い越して、キャラバン(車)の中で、長いガタガタ道を、ほぼ1マイルの間、スピードを時速96km近くまで上げていた。
それから彼女はフォーチュンロックからエリーへの道の途中の砂の路肩で、ひどい曲がり方でスリップし、休むことにした。
彼女は自分の額を静かにハンドルに当てた。
 
 それは自殺ではありえないわ、と、キャサリンは思った。
自殺は絶対あり得ない。
想像できない。
考えられない。
問題外だわ。
 
 どれくらい長く彼女はそこにいたのだろうか、分からなかった、多分10分ぐらい。
それから彼女は再び走り出し、今度はもっとゆっくりと、奇妙な種類の落ち着きを伴って。
その落ち着きが彼女を襲っていた。
それは、多分骨の髄からの疲れ、それとも単に無感覚を装ったもの・・・
彼女はマティーのところに着くだろう、そしてジャックについて言われていることは本当の事ではないだろうと自分に言い聞かせた。

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