“The Woman” by Doris Lessing (13)

“The Woman” by Doris Lessing (13)
https://jp1lib.org/book/3902043/21ed13

大尉は非常に不快な思いで、ふくよかな村娘のローザをちらりと見た。
彼はこのおそい段階でも英語を使って、「背が高くて色白、可愛い少女でした、可愛い!」と相手をにらみつけながら言った。
「英国人の少女だったかもしれない。」

 「それが完全に彼女の人となりでした。」と、ヘル・ショルツが笑いながらそれと無く言った。

 「それは1913年の事でした、」と大尉がしつこく言い、それから「彼女は黒髪だったと言いましたか?」と言った。

 「そうです、黒髪です。その時は私にそれが起こった最後ではありませんでした。」と、彼は笑った。
「私には私の妻との間に3人の子供がいました、素晴らしい女性でしたが不幸にも彼女は、今は、死んでいます。」
またしても彼の目に涙があふれていたのは疑い在りません。
それを見て、大尉の怒りは急上昇した。
しかしヘル・ショルツは立ち直って言った:
「しかし、自分に聞くのですが、この3人のほかに何人の子供がいるのだろうか、と。
時々、通りでいくらか似ている顔をした若い男を見て、自分に尋ねるのです。
多分、彼は私の息子だろうか?そうだ、そうだ、と。わたしの友人よ、これは全ての男性が自問するにちがいない事なのです、時々、そうでしょう?」
彼は顔をひいて心から笑った。
がそこには後悔の念が漂っていた。

 大尉はしばらくしゃべらなかった。
その後、英語で「全てはうまくいっています、しかしそれは私に起こった、起こったのです。」と言った。
彼の言い方は反抗的な生徒のように聞こえ、ヘル・ショルツは肩をすくめた。

 「それは私に起こったのです、ここで、このホテルで」

 ヘル・ショルツは彼のイラつきを押さえながらローザを見て、この残念な事が起こって以来初めて、適正な調子に声を潜めて、英語で言った。
「そうですね、多分、私たちが正直ならこの事が全ての男に起こり得る事だと言わなければいけないでしょう、いやむしろ、というか、存在しなかったら発明する必要があったのでしょうか?」と正直に皮肉っぽく笑いながら静かに肩をすくめて言った。

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