「シュレディンガーの赤ん坊」チャーリー・フィッシュ(8)

「シュレディンガーの赤ん坊」チャーリー・フィッシュ(8)
https://www.eastoftheweb.com/short-stories/UBooks/SchrBaby922.shtm

                                                            <8>

私の足はガラスを突き破った。
その音は驚くほどで、ガシャーンという音が虚ろに響いた。
もっと驚くことには、私が脚を引き抜いたとき、大きな三角形のガラスが私のふくらはぎに刺さったまま、一緒に脚に付いてきたことだ。

 私はよろめいて、何かに掴まろうと手を伸ばしたが、足を踏み外してしまった。
私は落下しながら、これまで今まで色々の失敗を目にしていたが、今回の失敗程の失敗は無かったと認識するのに十分な時間はあった。

グァシャッ!
歩道は塩辛い金属の味がした。
私は気絶した。

私は驚いて目を覚ました。
水平だ。
立ち上がろうとしたが、私の足は緊張し、私の頭には誰かがたくさんの釘を打ち込んだ様な感じだった。
私は焦点を絞ろうとして目を細めた。
私は病院にいたのだった。赤ん坊無しで。

 胸の圧力がつよまり、さらに高まり続けた、まるで音楽隊が私の胸部を踏みつけて行進してでもいるかのように。
それはまるで、バグパイプを吹く軍楽隊のパレードのように大きくなっていった。
私は明らかに最悪の父親だった ― いや、最悪の人間だった ― 世界中で一番。
もし私が生命維持装置だったら、それは今直ぐ電源を切られるだろう。

 「どうかリラックスしてみて下さい。」
声の主は頑丈そうな容貌の女医さんだった。
「あなたはショック症状、頭部外傷、足の骨折、アキレス腱の部分断裂の治療の為キングス大学病院救急科にいます。
あなたは大丈夫でしょうが、落ち着く必要があります。」

 私は何か言おうとしたが、私の声はどこか別の所から出ているような感じで、話の脈絡を失ってしまった。

 「落ち着きなさい、そうしないともっとダメージを受けますよ。
動き回るのを止めてあなたの名前を言って下さい。」

 私は懇願するような涙ぐんだ眼で医者を見上げた。

 「名前は何とおっしゃるんですか?」彼女は音節ごとに区切ってはっきりと言った。

 私は、モルヒネの霧を振り払おうと戦いながら、考えに集中した。
「ダニ エル、フランク。」

 「ダニエル フランクさん?」

 私は頷いた。
「私の・・・赤ちゃん・・・」


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