“The Woman” by Doris Lessing (4)

“The Woman” by Doris Lessing (4)
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そこにヘル・ショルツとフォースター大尉が座っていて、飢えた恨めしそうな目で彼女を見ていた。

 ローザは彼女の青い目を怒りに細めて彼女の口は小さく冷たくなり一瞬前の優しさとは対照的だった。
彼女は一人の紳士からもう一人の紳士へと冷酷な視線を送りその後もう一度欠伸をした。
今度は軽蔑的な長い欠伸だった。
そして強調するため手の甲で口を叩き長い下降音で吐きだし、しかし、あたかも実はこの小さな表現に費やする時間さえなかったと言わんばかりに短く断ち切った。
その後彼女は糊のきいたプリント柄の服をひらひらさせて靴音を響かせて彼らの前から立ち去った。
彼女は中に入ってしまった。

 テラスは空になった。
鮮やかに塗られたテーブルや縞模様の椅子、花柄の日傘、全てが、紳士たちが座っている小さな一角を除き、冷たい影の中にあった。

 同時に、同じ衝動から、彼らは金色に輝く太陽の光の最後の日向にテーブルを前に押して持って行った。
そして今お互いをまっすぐ見て率直に笑った。

 「一杯飲みますか?」とヘル・ショルツが英語で尋ね、彼の上機嫌の笑顔は意図的な悔しそうな冷静さで引き締まった。
フォースター大尉は、冷静さは敗北を認めるには早すぎると思ったと見え、少し迷った後、「良いですよ、ありがとう、飲みましょう。」と言った。

 ヘル・ショルツが鋭く声をあげ、ローザが少し用心しながら、部屋の中から現れた。
しかし、今やヘル・ショルツはもはや懇願者ではなかった。
いつも労働者を雇っている、使用人の主人である男は、彼女の顔を一度も見る事も無く、ワインを注文した。
そしてフォースター大尉は絵に描いたような温厚な紳士然としていた。

 彼女がワインを持って再び現れる頃には、健全な男の親交がダメになるのを許すなんてなんと愚かだったのだろうと言い合うくらい、彼らは深い仲良しになっていた。
譬え一週間と言え、女性のたわいない魅力の為に。
彼らは大声でジョークを言って笑っていた。
いや、ヘル・ショルツはむしろ大声で好色なジョークを言い腹の底から笑っていた。
ヘル・ショルツは温かいバイエルン地方人の愛想の良さを表していたが、フォースター大尉の笑いは少し神経質で、喉の奥から出ていて、どちらの関係性にもある種の引っかかるものが有った。


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