“The Pilot’s Wife” by Anita Shreve (78)

“The Pilot’s Wife” by Anita Shreve (78)
 
 彼女はいつものようにそこを曲がり丘を登って行った。
まだライトはついていなかった、彼女はマテイーとジュリアがまだベッドにいるのだろうと想像した。
彼女は車を降りて、少しの間静けさの中で立ち尽くした。
そこにはいつも、夜の静けさと今からやってくる日中の騒々しさの間の、朝の瞬間があった。
そしてその時間はキャサリンにとって時間が止まったように思えるのだ。
全ての世界が動きがなく期待して待っているのだ。
車の周りの大地は3日前から降ってまだ解けていない粉雪が積もっていた。
岩の上には薄いレースのように雪が凍り付いていた。
 
 ジュリアの家は丘の上に立っていた。
それは時には食料品などを運び込むときには大変だったが、気分が乗った時には西向きの素晴らしい景色を提供した。
家は19世紀の中ごろに建った古いものだった。
かつては一マイル離れた農場の離れ家だったこともあった。
家の一方は細い道で、もう片方は石の壁で仕切られていた。
石の壁の向こうは曲がったリンゴの木が整然と植わっている畑があり、夏の終わりまでには既に埃っぽいバラ色の果物をつけていた。
 
 彼女は車のドアを閉め、玄関の道を上がっていき、中に入った。
ジュリアはキャサリンが成長していたときも、他人がそうした時も、今でも、決してドアにカギをかけなかった。
キャサリンはもう一度ジュリアの家の独特の匂いを嗅いだ、オレンジ・スポンジケーキと玉ねぎの匂いだ。
キャサリンはパーカーを脱ぎ居間の椅子に掛けた。
 
 家は手狭ではあったが3階建てだった。
キャサリンの両親が死んだとき、ジュリアは最上階の彼らの寝室をキャサリンに譲ることで彼女を励ました。
いくらか躊躇した後、キャサリンは自分の本をその部屋に、一つだけある窓のところに机を置いた。
中層階には2つの小さな寝室があり、一つはジュリアのだった。
家の一階は居間と台所だった。
居間にはジュリアの婚礼家具、色あせた茶色のビロードのソファ、張替の必要な2脚のクッションのいい椅子、ラグマット、脇テーブル、それ以外の空間のすべてを閉めているグランドピアノがあった。

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