“The Pilot’s Wife” by Anita Shreve (249)

“The Pilot’s Wife” by Anita Shreve (249)

 彼女は眠気を覚え目を閉じた。
水に浮力があるにもかかわらず、彼女にとって体を動かして湯船から出るのには努力が必要だった。
彼女は努力して心を空にして、お湯と石鹸と、他に何も考えないようにした。

 ドアが開いたとき、お湯の泡は少し消え、彼女の胸は露出していたかもしれないのにもかかわらず、彼女は動かず自分を隠そうとしなかった。

 彼女の両ひざは石鹸水のお湯から突き出した火山島のように突き出して見えた。
彼女のつま先がお湯の栓の鎖を弄んだ。

 彼は紅茶を注文した。
ブランディーも一杯。

 彼は浴槽の端にカップとグラスを置いた。
彼は立ち上がって流し台に寄りかかり、両手をズボンのポケットに突っ込んだ。
彼はくるぶしの所で脚を組んでいた。
彼女には彼が彼女の体を見ていることが分かった。

「僕ならそれを混ぜて飲むけどね、」と、彼が言った。
彼女は彼が言ったようにしようと立ち上がった。
「一人にしてあげるよ、」と、彼が言った。
「行かないで。」

彼の後ろの流し台の鏡は湯気で曇っていた。
窓の近く、熱でかき混ぜられた外の空気が雲の塊を作っていた。
彼女はブランディーを紅茶に注ぎ、かき混ぜ、ゆっくりと飲み込んだ。
程なく彼女は体の中心に熱を感じた。
ブランディーの薬用効果は素晴らしいわ、と彼女は思った。

 彼女は泡の付いた指でティーカップを持っていた。
彼の顎が動いた。
彼はため息をついたのかもしれない。
彼ポケットから手を出して、親指で流し台の端の水蒸気で出来た水滴をこすった。
「バスローブが必要になるわね。」


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