“Girl With a Pearl Earring” by Tracy Chevalier (183)

“Girl With a Pearl Earring” by Tracy Chevalier (183)
彼は正しかった。
まるで、私が今、部屋でオイルと一緒に寝ていること、何時間も座って絵に描かれ、その匂いを吸っていることを推測しているかのようだった。
彼はそう想像したがそれを口にすることはできなかった。
彼が目が見えないことが彼の自信を奪い去り、それで自分の心にある考えを信用できなかったのだった。

一年前であれば私は彼を励まして、彼が考えている事をそれとなく暗示し、彼の考えをしゃべるように機嫌を取ろうとしたかもしれない。
しかし今は黙って、まるでカブトムシが背中を下にして落ちて自分でひっくり返ることができないように、格闘している彼を見ているだけだった。

私の母も彼女の想像したことが何なのかは分からないが、勘ぐっていた。
私は時々彼女と目を合わせることができなかった。
私が見た時、彼女の様子は隠された怒りと好奇心と傷の入り混じったジグソーパズルのようだった。
彼女は自分の娘に何が起きているのかを理解しようと努力していた。

私は亜麻仁油の匂いには慣れっこになってしまっていた。
私は亜麻仁油の小さな瓶を枕元に置きさえした。
朝起きて服を着る時私はレモン汁に鉛錫の黄色一滴垂らしたような、それを窓に置いてその色を称賛した。

私は今その色をまとっている、と、私は言いたかった。
彼は私をその色に染めているのだ。

その代わり、私の父の心をその匂いから遠ざける為、私は私の御主人さまが取り掛かった別の絵について説明した。
「一人の若い女性がチェンバロの前に座って演奏しています。
彼女はパン屋の娘が描かれた時に着ていたのと同じ黄色と黒のチョッキを着て白いサテンのスカートをはき、髪には白いリボンを結んでいます。
チェンバロの曲線部分には別の女性が立っていて、楽譜を持って歌っている。
彼女は緑色の毛皮の縁取りの付いた部屋着と青いドレスを着ている。
その二人の間には私たちに背中を向けて男が座っている。」


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