“The Woman” by Doris Lessing (14)

“The Woman” by Doris Lessing (14)
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 そして今、大尉に対する彼の表情は、ああ!
男同士の団結、礼儀正しさ、私達2人を傷つけた、向こうにいるあの少女の目に映った私たちの威厳の為に一緒に退出しなさい、私の友よ、そしてあなたが言っている事を考えるのです!

 しかし大尉は思い出に浸っていた。
「いや、」と彼は言い張った。
「いや、あなた自身の事を話してください。もし、それが起こったのなら、ここで。」
彼は話すのを止めて、「私は結婚しませんでした」とやっとの事で言った。

 ヘル・ショルツは肩をすくめて、最後には黙り込んでしまった。
それから、「お嬢さん、お嬢さん、お勘定をお願いできますか?」と叫んだ。
そろそろ終わりにする時間だ。

 ローザはすぐには振り向かなかった。
彼女は髪の後ろに触れた。
彼女のエプロンをまっすぐにした。
片方の腕からナプキンを取って、もう一方の腕にきちんと掛け変えた。
それから振り向いて、笑顔で彼らの方に向かってやって来た。
その笑顔が注目されることを意図していることは一目瞭然だった。

 「お支払いですか?」とヘル・ショルツに聞いた。
彼女は落ち着いて意図的に英語で話し、大尉はひどく居心地悪くなり始めたように見えた。
しかしヘル・ショルツはすぐに自分を立て直し英語で「ええ、お願いします。」と、言った。

 彼女は彼が差し出したさつを受け取り、エプロンの下にある小さなカバンから小銭を出して数えた。
必要な最後のコインをテーブルに置くと、彼らの前にまっすぐに立つて、手を前にそろえて、平等に二人に微笑みかけた。
最後に、彼らが彼女の優しく母親のような笑顔を充分に受け取った後、彼女は英語で「多分、彼女はあなた方二人のお好みに合わせて髪の色を変えたんじゃないかしら?」とそれとなく言った。
そして彼女は笑った。
彼女は頭を後ろに戻して心の底から笑った。

 ヘル・ショルツは、敗北を冷静に受け入れ、悲しそうに、理解した笑みを浮かべた。

 大尉は椅子に座ったまま、彼ら両方に敵意を持って、彼自身の本物の思い出にしがみついていた。

 しかしローザは彼を見て笑い、最後のドレスのヒュッとなる音と共に二人を残しテラスから去って行った。


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