“Stories” by Doris Lessing (10)

“Stories” by Doris Lessing (10)
https://jp1lib.org/book/3902043/21ed13
1, “The Habit of Loving “
彼女は眼を閉じた。
彼女が眠っているのを確信し、彼は肘をついて体を起こし彼女を見た。
明かりはまだ点いていて、彼女の頬の曲線は豊かで柔らかく子供の頬のようだった。
彼は彼の手のひらの側面で頬に触れると、彼女は眠ったまま体をげんこつのように縮めた。
彼女の手は子供の手のように未熟で白く彼女の顔の前の枕の上で握りこぶしを作っていた。
 ジョージは彼女を抱き寄せようとしたが、彼に背中を向けてベッドの反対側の隅に行った。
彼女は熟睡していて、眠りは揺るぎないものだった。
ジョージはその事が耐えられなかった。
彼はベッドを出て、冷たい春の風の中で窓の側に立って、白い月の下に立っている白い桜の木を見て、ベッドで眠っている冷たい少女の事を考えた。
夜明けが来るまで凍えるように冷たい月光の下に留まった。
次の朝、彼は大変ひどい咳をして、起き上がる事が出来なかった。
ボビーは魅力的で献身的で快活だった。
「昔あなたを看護したみたいに、あなたを看護しているわ。」彼女は黒い瞳をクルクル回して言った。
彼女はクルショット夫人に頼んで別のベッドを部屋に隅に置いてもらった。
ジョージは彼女が彼の風邪にうつりたくないと思っていることは至極合理的だと考えた。
と言うのは、彼の重篤な病気が暗闇を分ける障害にはならなかった過去の時間を思い出したくなかったからだ。
彼は倦怠感や熱や極端な不眠の官能性を忘れようと決めた。
彼は恥ずかしいとさえ感じ始めていた。

 2週間の間、フランス人の女性は素晴らしい食事を一日2回持って来てくれた。
ジョージとボビーは大量のワインとリンゴのブランデーカルヴァドスを飲み、クルショット夫人と、新婚旅行で病気になる事について冗談を言った。
彼らは予定より早くノルマンディーから帰った。
ボビーは、友達が彼に会いに立ち寄れるので、家に居るのはジョージのためにも良い事だと言った。
それに、春の時期に部屋に閉じこもっているのは寂しく、二人とも食べ過ぎだったからだ。

 アパートに帰ってきた最初の夜、ジョージが彼女が書斎に寝に来るだろうと思って書斎で待っていたが、彼女はパジャマで大きなベッドにやって来て、彼は2度目の行為の為に彼女を抱いていた。
その後、彼女はたばこを吸い、ベッドに座って、むしろ疲れて小さく見えた。
それを見てジョージはひどく若くみじめだと思った。
彼はその夜眠らなかった。


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