“Writing Box” by Milorad Pavic (84)

“Writing Box” by Milorad Pavic (84)
https://jp1lib.org/book/16698678/7e0b66
「そうなの?」

 そして私がボールをほどくと、中からメモが現れた、それには彼が私に送ってくれた、私が決して使いたくなかった、電話番号が書かれていた。

 「あなたはこの電話番号が分かる?
これは毛玉の中に入っていたあなたの電話番号です。
私があなたを見つけた広告に有ったものと同じものです。
さあ、あなたが誰なのかを認めますか?」
 
彼はついに内部にあった葛藤が解けたかのように、言った:
 「あなたの質問に答えてみましょう・・・私は思い出しました、」と言い、続けて、「私は自分の人生の困難な時期、私の周りの男たちや、女性たちや子供たちの名前を忘れてしまいました。
それから私は狡猾に頼ったのでしょう。
その名前は完全に消えてしまわなかったので、私は水にその名前を書いたのです。
多分、水があなたの質問に答えてくれるでしょう。」

 「水が? あなたは私をからかっている!」
「水は言葉を教えることができます。
もしあなたがそれが眠っていないときに捕まえることができるなら。
何故なら水もまた、眠ったりしゃべったりするからです。男の様に。
いや、もっとうまく、女性の様に。
私は名前を言うことでそれを教えられます。」

 「それで、あなたの水は話ましたか?」
「いいえ。 それはあなたのフランス語の名前を発音できません。
水はフランス語を全くしゃべれないのです。
これは私の言葉さえ発音できないのです。」

 「あなたは今何をしようとしているの?」
私は彼に聞き彼の肩にキスした。
「何も。私はあなたに別の名前を与えるために、それを水に置いてきたのです。
発音できる名前を。」

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