“Mrs Dalloway in Bond Street” by Virginia Woolf (1)

“Mrs Dalloway in Bond Street” by Virginia Woolf (1)
https://www.gutenberg.org/files/63107/63107-h/63107-h.htm

ダロウエイ夫人は自分で手袋を買うと言った。
通りに出たときビッグベンが鳴っていた。
11時でまだ使われていない時間はまるで海辺にいる子供たちに向かって放されたかのように新鮮だった。
しかし、繰り返し打ち出されるゆったりした鐘の音は何か厳粛なものがあり、車輪のざわめきと足音の中で何か心を揺さぶるものがあった。
疑いなく、彼ら全員が幸せな用向きで向かっているわけではあるまい。
我々に関してはウエストミンスターの通りを歩く以上のことが語られねばならない。。
ビッグ・ベンも、英国工務局の手入れがなければ、錆びついた鉄の棒に過ぎないのだ。
ダロウェイ夫人にとって、この瞬間だけが完全だった。
というのは、ダロウェイ夫人にとって6月は新鮮だったから。
幸せな子供時代は、ジャスティン・パリーが(勿論ベンチでは弱かったが)いい人だと思っていたころは、彼の娘たちにとってのものだけではなかった。
夕暮れの花々、煙が立ち上り、ミヤマガラスたちの鳴き声が10月の空気を通して、高い空から落ちてくる。
子供時代の代わりをするものは何もない。
ミントの葉のひとひらで、それとも青い輪のついたカップだったりがそれを思い出させたり。
可愛そうに・・・彼女はため息をついて前に進んだ。
ああ、馬の鼻のちょうどその下に、この小さな悪魔が!
そして彼女は、ジミー・ドースが向こう側でニヤリと笑ったとき、縁石の上に手を伸ばしたままで立ち止まった。

スコープ・パービス(C.B.)は、事務所に急ぐ途中に、彼女の事を、魅力的な女性、釣り合いが取れ、熱心でピンク色の頬にしては奇妙に白い髪をしているなと見た。
彼女はほんのちょっと身を硬くして、ダートナルのバンが通り過ぎるのを待っていた。
ビッグベンが10番目を打ち、11番目を打った。
鉛色の環が空中に溶けていった。
受け継ぎ、引き継いでいる、自尊心が彼女を直立させ、規律と苦しみに出合わせたのだった。
人は、フォックスクロフト夫人が昨夜、宝石で飾り大使館で心を痛めていた事を考えて、どれほど苦しんだことだろう、と彼女は思った。
というのは、あの素敵な男の子が死んで、今や(ダートナルのバンがかよった)古いマナーハウスをいとこの手に渡さなければならなくなったからだった。

瀬戸物屋のそばで、ヒュー・ウィットブレッドが、お互いを子供の頃から知っていたので、「おはようございます!」とかなり激しく帽子を脱いで、言った。
「どちらにお出かけですか?」
「私、ロンドンを歩くのが好きなの」と、ダロウエイ夫人は言った。

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