“Stories” by Doris Lessing (2)

“Stories” by Doris Lessing (2)
https://jp1lib.org/book/3902043/21ed13

1, “The Habit of Loving “
 そのため、彼は今までのように彼の仕事に不熱心ではなくなり、彼の友人が書いた新しい劇を上演する事に同意した。
ジョージ・タルボットは演劇人だった。
彼は何年も劇に出演することはなかったが、記事を書いたり、時には劇を製作したり、重要な機会にスピーチをしたりしたので、誰からも知られていた。
彼がレストランに入ると、人々は彼の目を引こうとたが、彼はその人々が誰なのか知らなかったことがよくあった。
マイラがいなくなった4年間、彼は寂しさのあまり、若い女性たちと劇場の周囲で関係を持っていた。
彼はマイラにこれらの関係を率直に書き送っていたが、彼女はその事についてはなにも触れなかった。
今や彼はこの数か月、大変いそがしく、ほとんど家に居なかった。
彼はかなりの金を稼いだ。
そして彼は彼と一緒にいる事を人前で見られることを喜ぶ女性ともう少しだけ関係を持った。
彼はマイラをすごく思っていたが、彼らは常に良い友達であろうと合意したにもかかわらず、彼はもう手紙を書かないことにして、彼女も彼に手紙を書かなかった。
 ある夕方、彼は彼が尊敬する友人に劇場のロビーで会った。
彼は一緒にいた若い女性に、その友人は彼の同世代では最も魅力的な男で、どんな女性も彼に抵抗できなかった、と言った。
その若い女性は、ロビーの方をちっと見て、「そうでもないわね。」と言った。
 その夜、ジョージ・タルボットは家に帰って、一人、正直に鏡に自分を映して見た。
彼は60歳だが、そうは見えなかった。
過去にどんなに女性を引き付けたとしても、それは彼の外見ではなかったし、そんなに変ってはいなかった。
:しゃきっと立った、髪をきちんとなでつけた、白髪の、身なりの良い男。
俳優をやっていたここ数年来、彼は自分の顔に注意を払っていなかった。
;しかし今、彼はいつになく虚栄心に駆られ、マイラが彼の口ひげを賞賛し、妻が彼の目元を愛していたことを思い出した。
彼は鏡のあるロビーやレストランでちらりと自分を映して見て、自分は変わっていないと思った。
しかし、彼はその上品な外見と彼が感じている事の間に食い違いがあることを意識し始めていた。
彼の肋骨の下で彼の心臓は腫れあがり、柔らかになり、痛みを伴うようになり、以前の彼に敵対する、同情すべき醜悪な部位となっていた。
人々が冗談を言っても、彼はしばしば笑えなかった。
そして快活で、遠回しでドライだった彼の話し方は変わってしまっていたに違いない。
というのは、一度ならず、旧友がかれは落ち込んでいるのかと聞き、もはや彼が話をしても嬉しそうに笑わなかった。
彼は、自分が良い付き合いをしていないと推測した。

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