“Writing Box” by Milorad Pavic (15)

“Writing Box” by Milorad Pavic (15)
https://jp1lib.org/book/16698678/7e0b66
 「レディーはそんなことを心配するべきじゃないですね。
それに、そのほかの施設も充実していますよ。
96番のバスはちょうどあなたのアパートの正面玄関の前に泊まります。
角を曲がったところにパリで最も美しい、ブルターニュ通りに市場がありますし、そこの角には犬のための小さな路上トイレがあります。」

「あなたは私を納得させましたね。犬のトイレもコミでいただくわ・・・
私は今日は何でも買っちゃうわ。」

 「ほかのアパートは見たくないの?」と、エヴァが二人きりになるとすぐ聞いた。
「ところで、なぜほかのアパートが必要なの?あなたの新しい毛皮のコートのため?」
「多分、私は私の夫と別れたいのよ・・・
それに私はこのアパートが好きだし。
私は昔からこんな階段の付いたアパートが欲しかったの。
あの大きな表玄関を見たことがある?
パリには子供の時から知っている階段があるのよ、分かるでしょ。
マレ地区には私が恋人を迎えてよくそこでキスをした美しい階段の付いた門があったわ。
そんな階段とそんな門は私に即決で契約させてしまうのよ。
フィーユ・デュ・カルヴェール通りの門はそんな門だったの。
ガラス、木と真鍮で作られた曲がりくねった階段。
もみの木と漆の匂い。
もし、何の準備もなしにそこに入ったら、あなたはおしまいよ......」

 30分程後には毛皮のコートを腕に抱えて、又、モンテーニュ通り店にいた。
中では音楽が鳴り、モデルたちが客を見つけるや毛皮を見せようとしていた。
それは女性の黒髪の匂いがした。
わたしが「スングルフ?」と叫ぶと、彼が店の後ろから現れた。

 「やっと来たわね・・・
わたしは蝶ネクタイじゃなくチェーンを付けなさいって言ったでしょ、スングルフ。
でも聞く気はないのね・・・
さて、ここで私たちの取引のもう1つの部分です。
あなたの年収はいくらですか?」
 「確かにお嬢様はあまり高くないと推測されますです。」

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