ジャカランダとジャスミン
南半球の私のいる街はすっかり暖かくなってきて、もう日中は28度まで上がる日も多くなってきた。もともと寒がりの私にとってはまだ肌寒いのだが、子どもたちは早々にプールに飛び込んだりしている。一年中温暖なこの街では、庭にプールがあるマンションや家も多い。
10月といえばこの辺りでは春まっさかりで、ジャカランダの季節である。ジャカランダは桜のような風情があるので、日本人にはちょっと特別な木だ。桜よりも、もっと艶やかで強気な佇まいではあるのだけど。
Photo: Kgbo
一つ一つの花は、桜とは程遠い形をしている。花弁は5つに分かれているのだが、根もとがくっついて筒状になっていている。桜よりも大きく、もっと存在感がある花だ。香りはほぼない。
こちらでは日本のような花見の文化はないが、それでもこの季節はジャカランダの美しい公園などに出かけていって、ベンチに座ってさりげなく花を楽しむ日本人が多いはずだ。ちなみに私がこちらに来て一番恋しいのは、花見と温泉と旅館のごはんである。
我が家の庭のジャスミンも満開になった。
ジャスミンの花は、香りが強い。暖かくなり窓を開ける日も増えてきたが、開けたとたんにふわっと香りが部屋の中にまで入ってくる。
日本ではジャスミンの精油が希少価値が高いとされていて、むかーしバイトしていた店で恐ろしく高い値段で販売していた記憶があるが、そんな話が嘘のようにこちらではどっさり咲く花である。大量の花からほんの少しの精油しか取れないそうだが、バラなんかとは違って、そもそも大量に咲く花なのである。
すぐに蔓が伸びてボーボーになるので頻繁に刈り込まなければならないのが面倒だが、この辺りの乾燥気味な気候によく適応して水やりの必要もなく、ほったらかしで育つ強い木だ。花のない緑の葉だけの姿も美しくて、こんな風に柵沿いに植えるのにちょうどいい。
日本のように厳しい冬を終えた解放感も、新年度として気持ちを新たにするフレッシュさもないけど、やっぱりこの季節はいいな、と窓を開けるたびに思う。
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