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老化を抑制する『オートファジー』とはどういう現象か?(読書メモ)

科学的思考を身につける

科学とは真実に限りなく近づくこと

科学には「真理や正しさをどこまで追究したところで、本当にそれが正しいかどうかはわからない」という前提がある。
真理に到達できなくても、真理に限りなく近づくことは可能です。それこそが科学の使命です。
つまり、科学は何かというと、仮説(理論)をどんどんよいものにして、真実に近づける営みです。

最強ツール「相関」と「因果」

相関関係とは「原因と結果ではないかもしれない」関係です。
因果関係とは、確実な「原因と結果の関係」です。
相関関係には因果関係が含まれていることはありますが、相関=因果ではありません。

科学的思考に必須な「比べる」姿勢

科学的に何かを調べるには、まず「比べる」こと。
比較することを対照群を取るといいます。そして、対照群がないものは「エセ科学」とみなされても仕方がありません。
対照群があるかをチェックしてください。

すべては仮説であり、検証がどのくらいあるのかを見ましょう。
一部の相関関係だけではなく、因果関係を見すえるのです。

細胞がわかれば生命の基本がわかる

生き物はみんな違うのが大事

多様性こそ、生命存続の鉄則です。
なぜ多様性が重要かというと、ある生き物の集団が生き残るにはいろいろなタイプがいたほうがいいわけです。
環境はつねに変わるので、何かが起こったとき、遺伝子が均一だと絶滅しかねません。多様性をもった生き物の方が、集団としては生き残る可能性が高くなります。
多様性がないと死に絶えるのが生命の本質です。

病気について知る

免疫には3通り撃退方法がある

免疫とは、「外敵を排除すること」です。
<敵を排除する方法>
①物理的に防ぐ方法
②細胞が相手を殺す
③抗体

人間は死ななくてよくなるかもしれない

「多くの生き物は進化の過程で死んだ方が有利だったのではないか」という仮説が出されています。
死んだほうが種の絶滅は防げる、ということです。

人は老化をあえて選んだ

人間を含めて、他の多くの生き物はわざわざ老化しているということです。
老化も死と同じで進化の過程でわざわざそれを選んだ可能性が高いということです。
老化している個体がいると、もし集団全員が飢饉や疫病に襲われたとき、先に死んだり、感染したりするのはもちろん老化した方です。年寄りが先に時間を稼げば、若い個体は逃げ延びることができるかもしれません。
外敵から身を守るときも同じです。

老化がなく、死なない未来はいいことなのか。
この問いに答えはありません。科学をどう使うかまでは、科学は答えを持ち合わせていません。

折角寿命が延びても、病気で辛い毎日を過ごすのであればまったくハッピーではありません。
この期間をなくし、平均寿命に近づけられないかということを、私を含めた多くの研究者や医師が考えています。つまり老化の阻止です。
死は避けられないにしても、人間も死ぬ直前まで若く元気なままであるように、生命科学の力でできないかと私は真剣に考えています。

細胞の未来であるオートファジーを知ろう

オートファジーは、細胞を「若返らせる」機能

オートファジーは、細胞の中の恒常性を保つ役割をするものです。

細胞の中のものを分解するのがオートファジー

オートファジーとは、「細胞の中の物を回収して、分解してリサイクルする現象」のことです。

オートファジーは何のために分解しているのか

<オートファジーの大きな役割>
①飢餓状態になったときに、細胞の中身をオートファジーで分解して栄養源にする
②細胞の新陳代謝を行う
③細胞内の有害物を除去する

有害物の回収のおかげでいろいろな病気が防げている

オートファジーによる壊れたリソソームの除去は、病気を防ぐのに大事だということです。
オートファジーが標的にする有害物は、病原体、壊れたオルガネラ、タンパク質の塊です。

オートファジーは歳をとると働かなくなる

オートファジーは、毎日少しずつ起こっている。また飢餓状態になったり、細胞内に有害物が現れたりすると、たくさんオートファゴソームができて盛んに分解を行います。
ところが歳をとると、オートファゴソームがなぜかできにくくなるのです。能力の低下です。

オートファジーを止めてしまう「ルビコン」

ルビコンはオートファジーが起こりすぎないようにします。いわば、オートファジーのブレーキ役です。
高脂肪食を食べたらオートファジーの働きが悪くなったのは、ブレーキ役のルビコンが増えたせいでした。

寿命を延ばすために何をすればいいか

<長寿化の代表的な事例>

①カロリー制限
②インスリンシグナルの抑制
③TORシグナルの抑制
④生殖細胞の除去
⑤ミトコンドリアの抑制

どれもが生存には必要な機能だけれども、機能は抑えた方がいいということです。つまり、元気がありすぎると長生きしないという感じがしますよね。省エネで低空飛行が長生きの秘訣なのかもしれません。

寿命を延長することにはオートファジーの活性化が関わる

相互に関係性はありませんが、①〜⑤のいずれも、オートファジーが盛んになる、つまり活性化すること。

歳をとると、ルビコンが増える=老化

歳をとってオートファジーの働きが悪くなるのは、ルビコンの増加が原因なのです。

ルビコンを抑えれば、老化をくいとめられる可能性がある

生き物はルビコンを抑えると寿命も延び、同時に老化を食いとめられる可能性が示されたのです。

オートファジーと病気の関係のまとめ

オートファジーには、老化を抑制する可能性がある。
<オートファジーが防御的に働いていると考えられている代表的な病気>
①生活習慣病
②神経変性疾患
③肝臓がん
④腎臓の病気
⑤心不全

オートファジーは、免疫力を上げるにも必須。
ワクチンの効きをよくしたり、炎症を抑えられる可能性も高い。美容にもいい。
一方で、オートファジーは、逆にがん細胞を助けてしまう。

日常生活でオートファジーを上げるにはどうすればいいか

<オートファジーを活性化させる代表的な食べもの>
①スペルミジン
②カテキン
③アスタキチンサン
④レスベラトロール

①スペルミジンは、豆類や発酵食品に多く含まれています。最も有名なのは納豆です。ほかにも味噌や醤油、チーズ、シイタケなどキノコ類にも含まれています。
お茶に含まれる②カテキンやサケ、イクラ、エビなどに含まれる赤色天然色素の③アスタキサンチンもオートファジーを活性化することがわかっています。
④これはポリフェノールの一種で、ブドウや赤ワインに含まれます。

健康によいと昔からいわれていることはオートファジーにもよい

手っ取り早くオートファジーを活性化したければ、食事を摂らなければいいでしょう。
どのくらいで活性化しているかというと、じつはあなたが昼ご飯を食べて、夕ご飯を食べる間くらいでも十分です。食後、4時間もすれば活性化します。一食抜けば、オートファジーはさらに上がります。

運動をすると筋肉のオートファジーが活発になります。
適度な運動はオートファジーを活性化して、糖尿病を抑える作用があるという結果が出ています。

控えた方がいい食事も明らかです。高脂肪食です。
脂っこいものを食べ過ぎると、ルビコンが増え、オートファジーの働きが悪くなって脂肪肝になります。

腹八分で、運動する。脂っこい食事を避ける。

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