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初めてのことを、してみる。|16|森のようちえん卒園

我が子二人は千葉県南房総市にある「森のようちえんはっぴー」に、4年ずつ通いました(2歳児は週三日、3〜5歳児は週五日)。園舎を持たず、毎日自然の中で保育するスタイルの森のようちえんは、1950年代にデンマークで始まってから国を超えて各地で実践されています。
私たちが住む南房総市には、幸いなことに、10年以上の歴史を持つ森のようちえんがありました。森のようちえんって何?どう違うの?何が特長なの?などはここでは置いておいて、私なりの森のようちえんに子どもを通わせた体験を、息子の卒園式での保護者代表あいさつとして文章にしたものを、紹介します。

春麗らかな今日、こうして大房の森に包まれ、晴れ空の下に集い、卒園の節目を迎えることができたことを、大変ありがたく、なんと幸せなことかと、しみじみと感じ入っております。

思えば6年前の4月、息子の二つ年上の姉が、星の子(2歳児クラス)に通い始めたことから、我が家のはっぴーライフが始まりました。その時、息子はまだ3ヶ月の赤ちゃんで、私に抱っこされながらはっぴーさん(保護者が保育に入ること)をしたり、片道35分のドライブをベビーシートに乗せられて、一緒に通ったりしていました。赤ちゃんの頃からはっぴーで育った息子は、スクスクと元気に育ち、にじぐみとなった今は、もう追いかけっこしても私には捕まえることができないほどです。

「はっぴーに通う」ということが日常だった日々も、今日で本当におしまい。
それはわかっていても、上手くそのことに馴染めてはいない自分がいます。

大きなリュックを背負って、おはようの場所までの階段を登っていく子どもの後ろ姿が、とても好きでした。いつしか私の方へは振り返らなくなって、まっすぐ友達の輪の中へ、自然の時間の方へ、向かっていくようになりました。
そして帰ってくる頃には、すっかりお日様や芝生の匂いをまとって、私の胸に飛び込んでくるのが本当に愛おしかった。誇らしげに、十分に満足した顔で、でも時には何か乗らない顔で、ああ、今日もたくさん心を使って過ごしていたんだな、それをきっと誰かが見てくれているな、と安心した気持ちで帰路に着いたものです。

そう、はっぴーでは、必ず、誰かが子どもを見つめて、その子の本心を見つけてくれていました。
喜びも悲しみも、怒りも楽しい気持ちも。すぐにそれに「どうしたの?!どうしたいの?!」と対応するのではなくて、その子がその気持ちを十分に感じ切る余白を残しながら、そっと寄り添ってくれている人。
この子はこうだダメだと、決めつけたり諦めたりせずに、心の底で「きっと大丈夫」とその子をずっと信じてくれている人…。
スタッフは毎日、保育後に子ども一人一人についての記録を書いてくれているそうです。猛暑の夏も、北風の寒い冬も、雨ふる日も、日々子どもに意識を向け続けてくれるプロフェッショナルな、最高のスタッフに、感謝の気持ちしかありません。子どもたちへの優しさと誠実さ溢れる保育を、本当にありがとうございました。

保護者のみなさん、一緒に子育てしてくれてありがとう。穏やかな空気感の中で、みんな似た温かい眼差しで、子どもたちを見守ることができたのは、はっぴーならではの奇跡だとすら思います。普通の保育園ではきっと得ることができなかった、親同士の結束力、尊い絆は、これからも大切なものであり続けることでしょう。本当に、はっぴーにして良かった。みんなに会えて良かった。卒園してからも、仲良くしてください。そして子どもの成長、自分自身の成長を語り会えるのを楽しみにしています。

そして、この大房という自然と触れ合える最高のフィールドを、守り続けてくれている、大房のスタッフに感謝しています。私もいっとき働いておりましたので、この環境を維持する大変さはわかりますが、多岐にわたる業務がある中でも、手を休めて、はっぴーの子どもたちに正面から向き合って温かく対応してくれたこと、本当にありがたかったです。

今日、卒園を迎えるにじ組のみんな、卒園おめでとうございます。
みんなの堂々としてキリッとした姿はとてもかっこいいです。みんなの頑張りが見えた影絵は感動しました。たくさん練習したんだね。みんなの小さい体にパワーがいっぱい詰まっているのが伝わってきました。はっぴーで強く優しくなった心と、元気いっぱいの体を、小学校でもたくさん使って楽しんできてください!

ひかり組、ほし組のみんな、一年間終わってとっても大きくなりましたね。おめでとうございます!
足も手も背も大きくなったし、走ったり縄跳びしたり木登りしたり、工作も折り紙も、できることがたくさん増えたと思います。一つ大きくなるということは、一つ小さい人が入ってくるということ。来年もいろんなお友達と、たくさんたくさん遊んでください。

最後に、このはっぴーという場を、十数年にわたり、守り続けてきてくれた沼倉さっちゃんに、最大級の敬意と感謝を送りたいです。認定子ども園に向けての市への働きかけや、新しいはっぴーはうすの物件探しなど大きなストレスある仕事をほぼ一人で陰で進めてくださっていたこと、また、園長という立場で矢面に立ってはっぴーを守ってくださっていること…おまけに今年度は全国フォーラムもあり、本当にお疲れ様でした。さっちゃん、生涯現役で元気に長生きしてください!!

はっぴーに通えて幸せだったな…と思っていたら、
先日詩が降りてきたので、本当の最後に、紹介させてください。

幸せなみんなへ

今日このあたたかい はれ の日を迎える
大切な 大切な はっぴーのみんなへ

みんなの足は
なんと幸せだったことでしょう
この大地を どこまでもどこまでも
走ることができて

みんなの手は
なんと幸せだったことでしょう
やわらかい葉っぱや つるつるの木の実
冷たい水も 友達のあたたかい手のひらも
触ることができて

みんなの目は 耳は 鼻は
なんと幸せだったことでしょう
光が照らす豊かな色を見て
風の音を聴き
花の香りにくすぐられて

みんなの口は
なんと幸せだったことでしょう
「今日も楽しい一日になるように」
と 思いのこもったおにぎりを
毎日食べることができて

幸せなみんなは
ここで育った体と心をつかって
夢を一つ一つ
叶えていくでしょう

そして出会う人たちも
幸せに していくのでしょう

友達の笑顔
大好き や ごめんねの言葉
大人がどんな優しい目であなたを見てくれていたか

たくさんの幸せの種を
心にまいて
光の中で 美しい花が
たくさん 開きますように


卒園、修了、おめでとうございます ありがとうございました

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