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自治体職員にとっての働き方改革ってなんだろう。

「働き方改革」
2019年4月に雇用対策法や労働基準法など、労働規制にかかわる一連の法律の改正によりここ数年これでもかと耳にする言葉ですが、私は兼ねてからこの働き方改革という言葉になんだか違和感を感じ続けています。結局のところ何のためにやっているのかきちんと考えたことがありませんでした。
今回はこの働き方改革について考え直し、自分なりに働き方改革の意義について納得したいと思います。

「働き方改革」という言葉から連想されるもの

働き方改革といわれると、私は残業時間の上限規制が真っ先に思い浮かびます。

施行当時所属していたのは、月の残業時間が100時間を超えることもあるような比較的残業の多い部署でした。
ある年から突然残業時間に上限が設けられ、今までのやり方を見直す必要ができたことを覚えています。残業が80時間しかできないなんて仕事が終わるわけないじゃないかと思っていましたが、やってみればなんとかなるもので、今までどれだけ無駄があったのかを思い知らされました。

一応補足しておくと、今まで間違いのないように5回チェックしていたものを3回に減らすなどして残業時間を圧縮していました。間違いがないようにチェックにチェックを重ね続けていたものを、時間の都合でチェックの回数を減らすことで対応したのです。

このような形で私にとっての働き方改革はスタートしたので、働き方改革=残業規制となってしまいました。

働き方改革とはそもそも何だったのか。

厚生労働省のホームページを見ると、以下のように記載されています。

「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です

厚生労働省|働き方改革〜一億総活躍社会の実現に向けて〜より抜粋

ここで注目したのは、『多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できる』という箇所です。つまり、今までのようにみんなで決まった時間に出勤して決まった時間に退勤するような働き方から、事情に応じて多様な働き方にしていきましょうと言うことです。
残業時間の規制などはあくまで手段であり、達成すべき目標は多様で柔軟な働き方を選択できるという状況だったわけです。

自治体でよく目にする働き方改革の手段

残業時間の規制以外の手段としてよく目にするのは、テレワークなどのデジタル化による勤務形態の変化でしょう。これは新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から一気に進められた印象もあります。その他にはフレックス制度や副業を認めている自治体も出てきています。

なぜ多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できることが求められるのか

厚生労働省が示す施行背景としては、生産人口の減少が挙げられています。
少子高齢化の人口減少社会においては働き手が足りなくなってしまうため、個人の事情で働き続けることを諦めなければならなかった方々にも働き続けていただきたいと言うことなのでしょう。

これについては大いに賛同できます。妊娠出産そして育児を経て仕事に対するコミットメントが低下していく先輩職員を多くみてきました。さらに今後は高齢化の進展によって家族の介護の問題も表面化してくることが予想されます。こういった家庭の事情で一定期間働くペースを落とさざるを得ない方々にとっては、個々の事情に応じて多様で柔軟な働き方を自分で選択できると言うのは魅力的です。

また多様で柔軟な働き方を自分で選択できると言うことは、現状他自治体との比較の中では競争力を生み出すことになるでしょう。
現状、まだまだ多様で柔軟な働き方を自分で選択することができる自治体は多くありません。勤務先を選択する際、就職先の候補となる近隣自治体の中でそのような働き方ができる自治体があれば、選択する大きな理由になると考えられます。ふるさと納税が一般化する前の状況と同じく、先に取り組み始めた自治体が成果を上げる段階にあると思いました。

自治体にとって多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できることは結局何のためになるのか。

既存の職員が働き続けられる環境を整備することや、他自治体と比較したときの競争力を得ることは、結局ところ何のためにやることなのでしょうか。

今回私が出した結論は、「生産性を向上するため」です。
私が思う自治体における生産性とは、「行政サービス利用者の満足度向上」と「業務効率の向上」ですが、今回の働き方改革では「行政サービス利用者の満足度向上」が対象となると思います。

行政サービス利用者の満足度向上とは、仕事の質を上げることで同じ量のインプットをしたときに行政サービス利用者により高い満足度与えると言うことです。仕事量は同じで効果が上がっているわけですから生産性が向上しているといえると思います。

上記の通り、市役所職員は夫婦共働きというケースも多いことから妊娠出産育児などライフステージの変化から仕事へのコミットメントが低下してしまう職員が多くいます。それ自体は家族の問題ですから私が良い悪いを述べる必要はありません。
しかし、組織として考えたとき、ある程度年次を重ねてこれから活躍してほしいであろう人材のコミットメントが下がってしまうことは痛手です。それは介護等の事情でも同じで、やはり経験豊富な職員のコミットメントが下がってしまうのも組織にとっては悩ましいでしょう。

その影響は最終的にどこに現れるかといえば、私は住民サービスだと考えます。人員不足により特定の職員に対して過剰な負担がかかる状況では、現状をより良くするような仕事はできません。現在の勤務形態はフルタイム勤務で残業も問題なくこなせる職員を前提としたもので、もはや現状に即しているとはいえないと思います。
経験を積んだ職員がライフステージの変化等があったとしてもその人のペースで働き続けられる仕組みができれば、その能力を発揮することで住民サービス利用者の満足度向上につながると思います。
また、そのような仕組みがある組織は競争力を有することになるため、今まで以上に人材が集まることになります。優秀な人材を獲得することもやはり住民サービス利用者の満足度向上につながり、生産性を向上することになるのです。

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