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嫌われた監督

当然のことながら落合について書かれた本である。

落合のことを、好きでも嫌いでも、もしくは知らなくとも
興味がなくとも、充分に楽しめ感動を覚える本である。

特に、チームリーダーや管理職の方々におすすめしたい本だ。

落合は勝利への執着を前面に押し出すわけではない。

淡々とチームを勝利へ導くために、何が必要かを見極め
感情を排し非情に実行した監督と言える。

その采配に、忖度はない。少しだけ根回しがあるものの、
それは非情な決断を行うための布石である。

批判をなんとも思っていないような、そんな横柄な態度さえうかがえる

現役時代も俺流と言われ、努力の痕跡を残さない。

監督となっても、焦り、不安を感じさせず淡々と業務を遂行している、
そんなイメージがある。

監督としても、選手としても孤高の天才

この強さはどこから来るのだろうか

そもそも孤独や不安という感情を持ち合わせていないのだろうか。

そんな落合のコアな部分が垣間見える事件が起こる。
試合中の監督室から落合の鞄が紛失したのである。

鞄の中の現金よりも、盗難にあったことよりも
落合が気に止んでいたのは、家族と共にしているお守りであった。

記者にそのことを聞かれてもなんだかおどおどしている。

落合が信じて大切にしているのはそれなのだ。
言えばそれ以外は無いのかもしれない。

孤高の天才、非情な采配、
しかし、身近な人へ心を寄せている、ただそれだけ。

落合はこちら側が単に難解に考えているだけ
難解に見えてしまっているだけ

落合の根っこは全てにおいてシンプルなのだ。

勝つために必要なことをしているだけ
打つために必要なことをしているだけ
自分が大切にしたい人を大切にしているだけ

一流は至ってシンプルなのだ

そんなことを教えてくれる本である

しかし何故か涙が流れる。

混沌とした中、戦っている人の背中を
優しく押してくれるような、そんな落合が
この本の中には描かれている。



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