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秋深まる季節にぴったりの吹上奇譚

待ちにまった吉本ばななさんの『吹上奇譚』の第3話を読み終えました。

第1話は2017年の秋頃に出ていました。
当時のブログに簡単な感想を書いているのですが、本当にこのシリーズって蠍座8ハウスっぽいのですよね。



本の帯にはいつも「哲学ホラー」と書かれているのですが、私にとってはホラーとは思えなくて。
ファンタジーでありながら、いやいや、こういう世界って存在しているよねと感じてしまうのです。

確かに設定やストーリーはかなり不思議でばななさんワールドだと思うのですが、私は登場人物たちの世界に凄く共感というか、しっくりくる感じを覚えるのです。

正確に言うと、世界というより登場人物たちの考え方というのかな。

風変わりな人たちばっかりだけど、あたたかいのです。

そう、それが例え「霊」であっても、あたたかい。

シビアな設定であっても、ばななさんが描く世界はどうして、こんなにもあたたかいのかなって。

私なばななさんの本だと、王国シリーズとか『海のふた』とか『サーカスナイト』とか『アムリタ』とか『サウスポイント』が凄く好きで、もちろん私の思春期からずっと寄り添ってくれているばななさんの作品はどれも好き。

でも、その中でも特に、、、っていう作品があって、それが上に書いた作品と、この吹上奇譚シリーズなのです。

不器用でも真っ直ぐな人たち。
どんな人でも生きていていいんだよ、ということを受け入れてくれる世界が広がっている。

そこに救われるのでしょうか。

例えば、吹上奇譚の第3話で、ある登場人物が精神的支柱としている人形や存在について書かれているのですが、誰にでもきっと居るであろう、在るだろう、その存在を周囲の人が尊重している様子にたまらなくなりました。


人のことって、100パー分かり合えることって難しい場合もあると思うのです。
家族であっても、どんなに親しい人であっても。

でも、受け止めてあげたり、尊重することは出来る。

私がばななさんの作品が好きなのは、純粋で真っ直ぐで不器用な人たちが出てくる、いわゆる「普通」とされている社会では生きにくいようなタイプの人たちに見えても、実はその人たちが真に成熟した、人として真っ当な感覚を持っていることを感じ取れるからなのかもしれません。


そして、吹上奇譚はやはりこの秋が深まりつつある季節に読むのがぴったりだなって個人的には思っています。

吹上奇譚はシリーズとしてもう少し続くようです。
めちゃ楽しみ!

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