複雑すぎる登場人物たち
やたら複雑な家系図
『バガヴァット・ギータ』はインドの古典であり、現代もヒンドゥー教の“道徳書”として読み継がれているもので、クリシュナが、戦いに挑む気になれない王子アルジュナを鼓舞する問答集のような内容であるところまで紹介しました。
では、読み始めよう!と、第1章「アルジュナの苦悩」のページをめくると……
ええと……どちら様?
ドリタラーシュトラって、サンジャヤって誰だっけ?
この疑問を持ってしまったが最後、複雑極まりない家系図にどハマりします。
多夫多妻で複雑なのは……まぁ置いとくとして、「太陽神」とか、上の図には描ききれなかったけど「ガンガー女神」とかも含めて普通に神、入ってる。なんならクリシュナは妹をアルジュナに強奪させたとか……ヴィシュヌ神の化身でもあり、義兄弟でもあるってこと?
百王子ってなんだ?百人なの?(それはそう)
アルジュナ含む五王子の妻は同じ女性……?
岩波書店版の文庫にはバガヴァット•ギータで描かれる戦争至るまでの一族のお話が、前書きとしてギュッと書かれています。そのほかにも色々と調べてみました。
バガヴァット・ギータを読む上で知っておくこと
書物として読み進めるために、最低限知っておくといいのは、この物語の視点、語り部が誰かということです。
冒頭に出てくるドリタラーシュトラは、主人公アルジュナの伯父にあたる、盲目の王です。
彼の息子たちが“百王子”、つまりアルジュナたち五兄弟の敵に当たります。
ドリタラーシュトラは盲目なので、千里眼をもつ従者サンジャヤに戦況を報告させています。
この物語は、サンジャヤが語り手として、ドリタラーシュトラに戦況を報告している、ということです。
神話だから、しょうがない
この家系図の人や神たちは、結構メチャクチャです。
聖仙ヴィサーヤは恐ろしい姿をしていて酷い悪臭がした。恐ろしさに目を閉じたアンビカーの息子(ドリタラーシュトラ)は盲目に、青ざめたアンバーリカーの息子(パーンドゥ)は蒼白になった
百王子の母は2年間妊娠し、腹を強く打つと鉄の玉のような肉塊が生まれた。それを百個に分けてギー(バターの上澄を集めた脂)を満たした容器に2年間浸すと100人の息子が生まれた
パーンドゥは鹿の姿をして妻(マードリー)と交わっていた隠者を射って殺した時に「妻と交わると死ぬ」という呪いをかけられた。交われないのでクンティーに神々を降臨させて子を産ませたが、結局マードリーと交わろうとして死んだ
パーンチャラ国の皇女ドラウパディーの婿選びの弓大会で、変装して参加したアルジュナが優勝。戦利品として連れ帰った皇女を、母のクンティはノールックで「5人でわけなさい」と言い放ち、ドラウパディーは五王子の妻になった
めちゃくちゃ色々あったのち、クリシュナはカウラヴァに対して、パーンダヴァに国土の半分を返すように和平交渉をしたが決裂し、戦争になった。
戦争の15年後、なんやかんやあって、最終的にみんな死んだ
神話だからしょうがない……とはいえ、ギリシャ神話と比較してもかなり複雑で、ものすごく長い物語がマハーラーバタなのですね。
もともと勇敢な戦士で弓の名手であるアルジュナも後ろ向きになるくらいに不毛な血縁同士の戦争が、バガヴァット•ギータの舞台です。
ふう……家系図と前書きだけで力尽きましたが、ここまで分かっていれば、一章は読めるはず!
いよいよ、読み進めていきましょう。