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ブルーインパルスに乗れなくても~空飛ぶ広報室と私のキャリア~

昨日ブルーインパルスが東京上空を飛行した。医療従事者の方々をはじめとする多くの方への敬意と感謝を伝えると同時に、多くの人に感動を与えたと思う。

私は医療従事者ではないし、この目で直接見ることも出来なかったけれど、昨日のブルーインパルスは私にとっても『また明日からがんばろう』という気持ちになれるきっかけを運んでくれた。

ブルーインパルスの便り

「お元気ですか?空をみたら見えるかも...」
私が前職を退職する時に一緒に泣いてくれた、尊敬する大先輩から久しぶりの連絡が。レジェンドとも呼ばれるその先輩からの便りのきっかけはブルーインパルスのニュースで、以下のリンクと一緒に送られてきた。

やっぱり空の仕事に関わる人達は、空が好きで、飛行機が大好きで、空の仕事をリスペクトしているという想いに触れた気がして温かかった。

「もし元気が無ければ、空を見上げたら元気になれるかも。 いつでも連絡してね、空は繋がってますよ。」

というメッセージのように感じて目頭が熱くなってしまった。その後、無事に見られたよと写真と動画も送られてきて、とても綺麗に青空の中にブルーインパルスが飛んでいた。

空の仕事が好き

空の仕事に関わる人の多くは、飛行機が好きだ。もちろん全ての人がそうというわけではないけれど、どんな役割の人も自分の仕事が人の役に立ち、誰かの夢になりうると信じ、誇りに思っている。

私もそのうちの一人だった。

航空会社に勤めていた両親の影響もあり、幼いときから空港に行き、飛行機に乗り、空の仕事に触れてきた。大人になってから、夢でなく現実として空の仕事に憧れを抱き、生まれて初めて心からなりたいと思える仕事を見つけられた。転職を叶えたとき、こんなに素晴らしい仕事は他にないと思えたし、天職だとすら思えるほど素晴らしい仕事だった。

大変なことも辛いことも、もちろん想像以上に山ほどあったけれど、プロ意識を持ってやりとげるにはとてもやりがいのある仕事だった。毎日自分の仕事に意義を感じながら全力で仕事に取り組みたいという転職前の自分の理想も叶えられたし、様々な人の想いを乗せた飛行機を安全に飛ばすための大きなチームの一員であることを誇りに思えた。
本当に好きな仕事だったのだと思う。

でも、私はその仕事を辞めてしまった。
辞めるという決断は本当に苦しかった。

そして、
今私はITベンチャー企業の新米広報PR担当だ。

空飛ぶ広報室

ブルーインパルスと言えば、私にとってはドラマ「空飛ぶ広報室」。

前職に勤めていた時にも見たし、広報PR担当になった際にも改めて見返した。大好きなドラマ。

綾野剛演じる航空自衛官の空井大祐は、幼い頃から夢だったブルーインパルスのパイロットを目指し、厳しい訓練に合格した直後、事故でケガをしてしまう。ブルーインパルスに一度も乗ることなく、もう二度とパイロットとして飛ぶことが出来なくなり、航空自衛隊の広報室に配属される。

夢を断たれ放心状態で1年もの間脱け殻のように過ごすが、TV局の記者として航空自衛隊を取材することになった新垣結衣演じる稲葉と出会う。彼女もまた、報道局の記者を夢見ていたが、情報局に異動を命じられたばかりで、やる気の起きない航空自衛隊の取材に、知識もなく誤解ばかりで無礼な態度を振る舞う。

そんな稲葉に、空井が航空自衛隊の活動や魅力を伝えようと一生懸命広報の仕事に取り組みはじめる。お互いにそれぞれ好きな仕事を失いながらも、今の自分の仕事に向き合い前に進もうとするなかで、恋に落ちるラブストーリーだ。

空井大祐に重ねる自分

私は、自分が広報PR担当になってから改めて見返した「空飛ぶ広報室」で、大好きな仕事にはもう二度と戻れないという辛さを抱える空井大祐に自分を重ねて泣いた。

彼の事故のように、自分ではどうすることも出来ないような、天から降ってきた運命によってその道が断たれたわけではなかったけれど、人生には様々なことが重なってしまうタイミングがあり、こんなに好きだと思える仕事でも続けられなくなってしまう現実を受け止めなければならなかった。どうにか辞めずに済むようにと、長い間休んだししがみついたのだけど、どうすることも出来なくなってしまった。仕事を辞めることは、心身ともに豊かで健康に生きるために、当時いくつかの決断をしたうちのひとつだった。

空井大祐は、苦しみながらも現実を受け止め、
「前の仕事を振り返ってばかりでは、まるで30歳で自分の余生が始まったみたいになってしまう」
「広報官として、自分がパイロットであったことが活かせるのであれば、ワクワクする」
と、徐々に前向きに広報の仕事に打ち込んでいく。

二度とパイロットとして空を飛ぶことは出来ないとしても、自分の仕事が航空自衛隊という組織にとって意味があり、パイロットだった自分だからこそ出来ることがある、と自分の仕事を意味付けして前に進んでゆく。その姿に、私は羨ましさすら感じた。

彼と違い、私は空の仕事から離れてしまった。

私も彼と同じように、いまだに自分が空を飛んでいたときのことを夢に見ることもある。自分がかつて経験した仕事なのに、今でも憧れがある。そしてあんなに面白くて好きだと思える仕事にはこの先もうきっと出会えないだろうと思っているし、空を飛ぶ仕事以上に天職だと思える仕事はきっと無いと思っている。

でも、それを知っていて
私は辞めることを選択した。
もちろん二度と戻れないことを覚悟して、決断した。

過去を後悔しない未来は、自分でつくれる

そして今、私も30歳からの人生を余生にしてしまわないように、自分の仕事を自分なりに意味付けしながら進もうとしている。天職だと思えたあの感覚にどれだけ近づけられるか、人生を通して挑戦している途中のような気もする。

少なくとも、自分の手で自分の仕事をより面白く、好きになれるように努力はし続けている。30歳でのITベンチャーへの転職も、広報PR部門立ち上げという仕事も、自分で切り開いた未来で辿り着いた仕事。前職を辞めた時に何も見えなかった真っ暗な未来を、確実に自分でつくっていると感じられる今がある。新米広報としてまだまだ分からないことだらけだし、上手くいかないことばかりだけど、どんどん面白いと思えているし、好きだと胸を張れる仕事になってきているのは、頑張ってきたねと自分に感謝してもいいかもしれない。

もちろん、空の仕事はまだ越えられないし、きっと越えられない。

だけど、変えられないものを嘆いても仕方がない。過去を後悔しないために出来ることは、過去を受け入れられる未来を自分でつくっていくしかない。

なりたいものになれなくても、別のなにかになれる

誰もがなりたい仕事に就けるわけではないし、そもそもなりたい仕事に出会える人も多くは無いと思う。私も新卒の就職活動の時にはそうだった。なりたいものなんて一度もなかった。だけど、社会に出てから運良くそういう仕事が見つかることもあると知った。

人生のうち4年間も天職だと思える仕事を経験することが出来たことは、それだけで幸せなんじゃないかと思う。

今でも夢に見るほど大好きな仕事に、もう二度と戻ることは出来ないという現実は、時々ふと自分を苦しめることもあるけれど、過去を振り返り嘆くのでなく、過去の経験を原動力に今や未来をよりよく生きることにもっと向き合おうと思う。

今の仕事も『けっこう好きだ』と言える。
それだけでも十分じゃん。

例えそれが一番好きだと言える仕事でなかったとしても。それだけで十分なのかもしれない。

例えなりたいものになれなくても、これからまた別のなにかを目指すことは出来るし、別のなにかにはなれる。過去は変えられないが、未来は変えられる。

よく立ち止まりそうになるけれど、また自分の足で前に進み続けるためのきっかけをくれたブルーインパルスに感謝します。自分の仕事をもっと好きになれるように、好きなことを仕事に出来るように、まだまだ努力して挑戦していきたいという想いが深くなった。一歩ずつ前に進もう。

飛行機は前にしか進めない。
飛行機はバック出来ないんだ。by空井大祐

2020/06/02追記
少し多くの方に読んで頂けているので、追記させてください。

JAL/ANAの採用中断で悲しくてやりきれない就活生もいると思います。

今後しばらく採用が無かったとしても、まだチャンスはあるかもしれませんし、中途採用もあるかもしれません。が、どうなるかは誰にも分かりません。

ただもし夢を叶えられなかったとしても、夢を持てたことは素晴らしいし、それを受け入れられる未来は作れるかもと伝えたかったんです。

夢を叶えようと進む人も
次の道へ進もうとする人も
心から応援しています。

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