【雑文】ジャイロ効果と倒れない経済

 
 ジャイロ効果というものをご存じだろうか。
 簡単に言うと「回転運動をするものは、高速で回転するほど姿勢が崩れにくくなる」という物理現象のことだ。
 回転するコマが倒れずに回り続けられるのも、自転車やバイクが転ぶことなく走り続けられることもこのジャイロ効果のおかげ。
 
 バイクの免許を持っている人はよく知っていると思うけれど、バイクは速く走らせることよりも、ゆっくり真っすぐ走らせることの方が断然難しい。
 
 バイク免許の卒業検定には一本橋という課題があって、幅30センチほどの橋の上を落ちることなくゆっくり通り過ぎなければいけない。ところがこれがなかなか難しくて、卒業検定では毎回、橋から落ちて検定に不合格となる人が必ず数人は出てしまう。

 ゆっくり走ることは簡単そうに見えるけれど、左右にふらつかないためにはそれなりのバランス感覚が必要になる。

 ところで最近の社会情勢を見ていると、経済というものにも同じくジャイロ効果がはたらいているのではないかと思うことがある。
 僕たちはここ最近毎日のように、回り続けていない経済が、いとも容易く倒れていく様子を見させられているような気がするのだ。
 
 今の社会は自転車でいえば、チェーンが外れかけているような状態なのだと思う。それでも完全に止まると倒れてしまうので、進みを遅くしつつ、走りながらなんとかチェーンを直そうとしているように感じるのだ。
 そうして左右に大きくふらつきながらも、ハンドルを懸命に動かすことでなんとか倒れずにいるような。
 
 だがそんな状態がいつまでも続くはずは無い。
 そのうち体力が尽きてしまえば、進めなくなって、倒れてしまうだろう。

 ジャイロ効果で今後の経済を考えたとき、社会の取りうる方法は二つしかないと僕は思う。
 
 ひとつは、一度完全に止まって、その間に不具合を完全に直してしまう方法。
 もうひとつは、止まることを諦めて、無理やりにでも進み続ける方法だ。
 
 実際にはどちらの方法をとっても大勢の人が死ぬことになるので、簡単に選ぶことなどできるはずもない。
 ただ僕の考えでは、そのうち後者の方法へと進んでいくのではないかと思う。つまり人々が自粛をやめて、通常の社会生活を送るようになるだろう、と。
 
 何日か前に、メンタリストDaiGoが「コロナで確率的に死ぬか、コロナショックで確実に死ぬか」というようなことを言っていたのだけれど、いずれこうした選択を迫られる時がくるように思う。
 自粛を続けられるだけの体力がある人や企業はいいけれど、そうではない大多数の人たちは、困窮して確実に死ぬくらいなら、確率の方に賭けざるを得ないだろう。
 
 あるいは日本政府が、完全に止まっても倒れないように支えてくれる存在になってくれればいいのだけれど、現実には難しそうだ。
 今後、僕たちは倒れずにいられるだろうか。すべては神の振るサイコロの目のままにある。
 
 
 
 

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