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【雑文】僕らはシチュエーションを食べる

 
 
 最近気づいたのだけれど、どうやら僕は「っぽい」食事が好きらしい。

 「っぽい」食事というのは、例えば、肉少なめのホワイトシチューと焼いたバケットの組み合わせのようなものだ。たまに自宅で作ることがあるのだけれど、いつも中世ヨーロッパの農民っぽいなあと思いながら食べている。

 他にも、お中元でもらうようなハムをナイフで雑に輪切りにしてモソモソ食べるときには、休憩中の冒険者っぽいなと思うし、まるでヴァイキングのようだと思いながらクリスマスに売られるような骨付きチキンにかぶりついて赤ワインをラッパ飲みしたりする。
 
 多分どこかで見たようなシチュエーションのイメージに、ついワクワクしてしまうのだ。
 
 食事は料理そのものだけではなく、シチュエーションも一緒に味わうものなのだと思う。
 料理自体の美味しさはもちろん重要なのだけれど、それ以外の要因で美味しさが何倍にもなるという経験は誰にもあるのではないかと思う。
 バーベキューなんかはその最たるものではないだろうか。

 僕はもともと居酒屋やバーで飲むことが好きなのだけれど、最近は自粛の空気のせいで全く行けていない。
 飲食店は軒並み客足が途絶えて苦しい状況に置かれているそうで、苦肉の策としてテイクアウトを始めたお店も多い。
 
 そうした飲食店を少しでも支援しようと思って、この間初めて近所の飲食店のテイクアウトを利用してみた。
 お店自体は何度も行ったことがある店で、その時もいつもと同じものを食べたのだけれど、やっぱり何か違うな、と思ってしまった。
 
 プラ容器に割りばし、持ち帰ったせいで少し冷めた料理。
 料理の味自体はそれほど変わっていないし美味しいのだけれど、どうしてもお店で食べるよりもワンランク落ちているように感じてしまうのだ。

 そういえば、これまで僕が利用したことのあるテイクアウトといえば、ハンバーガーや牛丼といったファストフードばかりだった。言い方は悪いけれど、それらは初めからシチュエーションに対する期待値が高くないので、店で食べてもテイクアウトで食べても大きな違いは無かった。
 
 ところが一般的な飲食店で食事をするときは違う。
 飲食店に行くとき僕たちは自然と、料理だけではなくその店の空間やサービスにもなんらかの期待をしている。
 店の内装や店員のサービス、周りの客の話し声。そうした空間を含めて、料理を味わっているのだ。
 
 一般的に飲食店での食事は、自炊をしたりコンビニで似たようなものを買ったりするよりも高い。それは自宅での食事では味わえない、飲食店のシチュエーションに付加価値がついているからなのだろう。
 当たり前のことだけれど、それを改めて実感できたことが新鮮な驚きだった。
 
 僕はやはりお店で食事をすることが好きなので、早く気兼ねなく店で食事ができるようになってほしい。それまではできるだけ、テイクアウトでお店を支えようと思う。
 
 
 

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