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小説

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記事一覧

通り雨ペイブメント

 女心と秋の空なんて言うけれど、本当にその通りだと思う。  二年つきあった彼女と同棲を始…

水上下波
4年前
5

エンドロール

 夜遅くに帰宅してテレビをつけたら、ちょうど映画のロードショーが始まるところだった。普段…

水上下波
4年前
8

包帯は風に吹かれて

 夜の公園には人影一つなく、私ひとりがぼんやりと暗闇を見つめている。  ふと気がつくと、…

水上下波
4年前
4

春風に撫でる

 春は始まりの季節と言うけれど、小さな嘘と一緒に、その日わたしの恋は終わった。 「わたし…

水上下波
4年前
4

Hello! How are you?

「Hello! How are you?」  自分の部屋。ベッドの上に置きっぱなしになっていたウサギのぬいぐ…

水上下波
4年前
6

氷の街と停まった時間

 その旅人は、はるか西方から二ヶ月間も歩き続けて、ようやくこの街に辿り着いた。    歩み…

水上下波
4年前
5

おじいちゃんは同級生

 信じられないことだけれど、僕のおじいちゃんは段々若返っていく体質らしい。  生まれた時には百歳だったおじいちゃんは、年々若返って、僕が生まれた時にはちょうど二十歳だったという。  だから僕が小学四年生になった今年、僕とおじいちゃんは同じ教室に通っているのだった。 *  ある日の休み時間。僕とおじいちゃんは教室の窓からグラウンドを見下ろしていた。  クラスメイト達は殆どが外に遊びに行ってしまって、教室内はまばらに残った人たちの話声くらいしか聞こえなかった。 「ケンヤは

馬鹿な女

 大学の外階段の、踊り場にある喫煙所で私は煙草をふかしていた。本当は自販機に飲み物を買い…

水上下波
4年前
5

ビー玉と絆創膏

 引越しのために部屋の整理をしていたら、クローゼットの奥から昔使っていたカバンが出てきた…

水上下波
4年前
2

日の出の日 #4(最終話)

前話はこちら *  靴を履き替えるころには、辺りはすっかり暗くなっていた。  昇降口から…

水上下波
4年前
2

日の出の日 #3

前話はこちら *  俺たちは他愛の無い話を続ける。  その間も三村のピアノは、言葉に色を…

水上下波
4年前
2

日の出の日 #2

前話はこちら *  俺たちしか居ないせいで、夕暮れの音楽室はやけに広く感じて、その代わり…

水上下波
4年前
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日の出の日 #1

 何もしなくたって、ただ毎日は過ぎる。  気の合う仲間とくだらない話をしたり。試験前に必…

水上下波
4年前
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好きと嫌いの間

 昼休み。屋上へと続く階段には、階下の喧騒が遠く聴こえている。  わたしのすぐ隣。階段に腰掛けたナナは、四角いイチゴオレの紙パックを一口飲んだ後、大げさなため息をついた。 「ホンット、アイツありえないんだよね」 「なに。また喧嘩したの?」 「だってさあ、普通に考えてケーキのイチゴは最初に食べるでしょ!」  そう言ってナナは、彼氏の愚痴を勢いよく話し出す。わたしはそれを話半分に聞き流しながら、ナナの横顔を眺めていた。  一年生の夏ぐらいだったから、ナナが今の彼氏と付き合い