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(詩)たんぽぽレジスタンス

たんぽぽレジスタンス 


暖かな日差しの中で
いちめん緑の芝生が
目の前に広がっている

一見平和な世界も
近寄って見るならば
芝生のところどころに
首のないたんぽぽたちの死骸が見えるだろう
切り口から流れた白い血もすでに乾き
茶色く干からびたからだが
力なく横たわっている

そう これは
おれたちを犠牲にして作られた
いつわりの秩序
緑の草の間から
たんぽぽたちの血が叫んでいる

鮮やかな黄色い花が
目立ちすぎるのがいけないのだそうだ
この庭の調和に合わないのだそうだ

周りの芝よりも上に首を出すな
出る杭は打たれる
伸びる草は切られる

いや 正確に言うと切られるのは
「雑草」の烙印を押された種族だけだ
おれたちに生きる権利は認められない
庭をきれいにするという名目で
やつらはおれたちを抹殺しようとする

それでもおれたちは
地下ふかく根を張り
ゲリラ的に出没する
時に石の間からも

だが戦いは毎年繰り返され
結果はいつも敗北
力の差は歴然としている

今年も庭は誇らしげに緑だ



おれは年老い
頭もすっかり白くなった
仲間はもうほとんどいない
この庭の片隅で
やつらの目に触れず
ようやくここまで生きてきたが
それが何になったのか

こちらに近づいてくる影がある
ついに見つかったか
小さな手が
おれの茎をつかみ持ち上げた

おれの前には丸い顔があった
いつもの連中よりもずいぶん小柄だ
だがその顔はこれまで見たものとは違って
喜びと好奇心に満ちていた

その目はおれを「雑草」としてではなく
デリケートな美を持ついのちとして
見てくれているのかもしれなかった

そいつはおれの白髪頭を顔の前に差し上げて
しばらくくるくる回しながら眺めていたが
やおら頬をふくらませると
おれに強く息を吹きかけた

白い綿毛に乗った
おれのいのち おれの未来が
風に乗って運ばれていく
あるものはこの庭に
あるものは垣を越えて
おれの知らない別の世界へ

すべてを失ったおれは
庭の片隅に打ち捨てられた
だがおれは不思議と満ち足りていた

遠ざかる意識の中で
おれは夢を見た
世界が黄色い絨毯で覆われる夢を
そこでは自由になったたんぽぽたちが
小さな太陽のような顔を
誇らしげに輝かせていた

(MY DEAR 323号投稿作)

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