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"The Sky Prison"第五章「処断の刻」

ガールズ・スチーム・メタル楽団FATE GEARによるコンセプトアルバム「The Sky Prison」の第四章です。

・登場人物紹介、これまでのお話はこちらから

—長時間にわたる戦いだった。

アンを含め、捕らえられた空賊達は拘置所の中にいた。

数日間にわたり1人隔離され、不安に苛まれていたアンの元を訪れたのは意外な人物だった。

「探したんだよ、アン。」

それはアンにとって聞きたいような、聞きたくないような、
暖かく懐かしい声。

「お父様…!」

父の顔を見て、涙が止まらないアン。

「ごめんなさい…私…取り返しのつかない事をしてしまったわ…」

「過ぎたことは仕方がないのだよ。とにかくアンが無事ならそれで良い。
…さて。」

アンの父は真剣な面持ちに切り替わった。

「君たちの弁護は私が引き受けることになった。アンは私のすべてをかけて護ろう。だが…君の『お友達』に関しては、どうなるか分からない。
最善は尽くすがね。」

涙を拭いながらアンは話す。

「お父様…あのね、ラカム船長とレヴィン…いえメアリには赤ちゃんがいるのよ。まだメアリのお腹の中だけどね。」

「ほう、そうなのか?驚いたな。裁判で戦う希望が持てそうだ。
(…それに、子を想う親の気持ちは、痛いほどわかる。) 何とかしてみよう。」


かつてスカイ・キラーと呼ばれ、
軍の中で名を轟かせていた伝説の少年兵士レヴィン。

Sky Prisonで最後まで抵抗していたその空賊がメアリという女性であったことに、軍の間で驚きが広がる。

お腹の赤ん坊に罪はないとの理由で、メアリは出産するまで処断が延期されることとなった。

しかし、ラカムの処断延期は叶わなかった。

囚人たちの脱獄をほう助するとどうなるか、民衆へ見せしめとして処刑を行うのが政府の目的だからである。


ラカムが処刑場に向かう前の僅かな猶予。メアリとラカムはきつく抱き合う。

「最後に父親として傍にいれなくて悪いな。」

「ホントにあんたがお人好しなせいで…でも…だから…愛してる。」

メアリはラカムにそう別れを告げた。

「(お前が死ぬところは見たくない。俺より先に死ぬんじゃない…
それがあんたの戦場での口癖だった。

部下として、妻として、約束は守ったけど…
少しは『家族』として過ごしてみたかった…かな…。)」


それから程なくして、アンは父の辣腕の弁護により無罪で釈放された。

残された限られた日々の中で、アンはメアリの元へ足繁く通い、
おしゃべりをしたり、花を贈ったり、
彼女が少しでも心穏やかに毎日を過ごせるように振る舞った。

メアリもラカムの惚気話が出来るくらいに心は回復していた。

ある日、メアリはアンにこうお願いする。
「…この子のこと、あんたに任せてもいいかい?」

「もちろんそのつもりよ。」


そして無事に出産を終えた彼女は、ラカムが辿った道へ向かう。

噂が広まり、伝説の兵士の最期を見届けようと、処刑場には多くの人だかりができていた。

「その子を頼む。
ずっと夢だった女友達が出来て嬉しかったよ。アン、本当にありがとう…」

「メアリ、どうか…天国では船長にいっぱい『メアリ』って呼んでもらって…ね…。」


最終章へ続く!

第五章解説

楽曲Prisoners, Father, 処断の刻と一気に続く章です。

結局戦いには負けてしまいました。

空中戦ではラカムとレヴィンは負け知らずの撃墜王でしたが、
軍の方はそれをよく知ってるので、
最初から空中戦を仕掛けず船内戦闘へ持ち込んだ、という設定。

ちなみに男たちが酒の飲み過ぎで戦えない、というのは、
アンとメアリの史実をもとにしてます。事実は小説より奇なり…。

さて、ここで第三章の伏線回収です。船長の台詞を思い出してみましょう。

—「レヴィン!お前しばらく禁酒だって言っただろ!忘れたのか!」

これは妊娠中の嫁の身体を気遣って放った台詞だったんですね。
ここに船長の愛がこもってると言っていいでしょう。

メアリはその後「忘れてた」と言っていますが、これは本当に妊婦であることを忘れてます(笑)よっぽど女としての自覚がないんだな…。

彼女が妊娠してたことも戦いに負けた一因でしょう。

船長の処刑のタイミングは最後まで悩みました。
2人同時に執行の案も考えましたが、船長は「何があっても自分が先に死ぬ(嫁が死ぬところは絶対に見たくない)」って思ってるキャラだと思うので、あえて先に逝かせることにしました。

しかし、自分で作ったキャラクターを死なせるのってここまで気が重いんですね…書き上げた後しばらく鬱になりました(苦笑)
作家の方々尊敬します…

最後の登場人物紹介:アンの父

さて、ここで救世主であるアンの父の登場です。
実はアンがよく分かってないだけで、
かなりの金と権力とコネを持ってる、という裏設定です。

連絡を貰って駆けつけてみると、娘が空賊の仲間になってるわ、兵隊を撃ち殺してるわで親としては頭を抱えたことでしょう…
何より、たまの休みにアンを狩りに連れていって銃を教えていたのは彼ですので。

最初はアンだけ救えればいいと思っていた彼ですが、
ラカムとメアリの姿に親としての共感を覚え、
何とか彼らも救えないかと考えます。

しかしさすがに政府の圧力には負けてしまい、子供だけは助かりますが、
ラカムとメアリは処刑されてしまいます。(泣くしかない)

しかし、なぜ政府はわざわざ2人を公開処刑したんでしょうか?
ラカムとレヴィンはなぜ軍を辞めたんだろう?

ここは色んなとらえ方があると思うので、
皆さんのほうで「深読み」していただけたらと思います。

伝説の少年兵士

あれ?スカイ・キラーってどこかで聞いたことあるぞ?
そうです、あの。Skykillerです。

Skykillerは戦争の歌ですが、実は戦後の話がこの「The Sky Prison」の物語なのです。
Skykillerの歌詞に出てくる単語が、​このアルバムに入っている全楽曲の歌詞にちょっとずつ割り振られています。

発表から10年を経て語られる衝撃の真実!!(笑)

明日いよいよ最終章です!


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