"The Sky Prison"第二章「可憐な花と短剣」
いつも親身になって話を聞いてくれるレヴィン。
気晴らしにたびたび立ち寄った町や船内を案内してくれる彼に、
アンは日毎に心を惹かれていった。
ある朝、アンはいつもどおり倉庫で目を覚まし、伝声管でレヴィンに伝える。
「レヴィン、おはよう!倉庫の鍵開けて下さる?」
彼の応答がない。なにやら船内が騒がしい。
アンはすぐ船長室に繋ぐ。
「ねぇ船長!私よ!レヴィンが応答無いんだけど!何なのこの騒ぎ?!」
「あー悪い、今ゴタゴタしてるんだ。しばらくそこで大人しくしてな。」
「ゴタゴタってなによ!レヴィンは?私このままだと干からびちゃう!
今すぐここから出して!」
「はぁ~どうしたもんか…」
渋々、ラカム船長がやってきて倉庫の扉を開けた。
「いいか、嬢ちゃんのことを疑ってる奴がいて、レヴィンに喧嘩を売ってきたんだ。
今から決闘をおっぱじめるってよ。ついてきな。」
「えっ、どういうこと…?」
船は空気の薄い雲の上を飛んでいる。
決闘の舞台となる甲板ではアンも、野次馬の空賊達も、レヴィンの対戦相手もみな酸素マスクを着けていた。
その中で、酸素マスクを着けずに短剣を持ち、慣れた様子でウォームアップするレヴィン。
『おれ、副船長が戦うの見るの初めてだな。』
『マジか?鬼神の如く強いぞ、あの人。』
野次馬たちの会話が聞こえてくる。
「ねぇ船長、これ止めさせられないの?レヴィンに何かあったら私…」
「心配するこたねぇって。レヴィンと俺は同じ空軍の出身でな。
空気が薄くても戦えるように訓練されてるのさ。
ま、そんなレヴィンを鍛え上げたのも俺なんだが…。
この場合、重装備な相手のが不利だろうな。」
レヴィンは短剣を構える。
「所詮この船にいるのは罪人ばかり。更生できないやつはできない…。
ルールに従えない奴は力ずくで黙らせる。さあ、かかってきな。」
第三章に続く—
第二章解説
楽曲「カルミア」「Draw You Dagger」にあたるお話です。ここでは歌詞が掲載できない代わりに解説いたします!
「カルミア」は母を探すことを決意したアンの曲であり、
そしてその決意を汲み取ってくれるレヴィンへの想いも描いています。
季節は初夏。ちなみにカルミアは毒のある花で、ちょっと危険をはらませた曲名でもあります。
レヴィンに会いたい一心で船長を折れさせて外に出るアン。さすがJK強いですね。
どうやらアンが原因で揉め事がおき決闘に発展したようです。
そりゃ「女を船に乗せない」という古来からのルールを副船長が破ってるんだもんね。しかも、どこの馬の骨かも分からないJK。
しかしながら
「ラカム船長の許可はとっており、
なおかつ一時的に匿っているだけでやましいことはしてねーよ、
副船長に対して喧嘩売ってきたお前のほうがルール違反だろ!」
というのがレヴィン様の言い分です。
裏設定としてはもともとお互い仲が悪く、ようやく決着をつける時が来たといった感じです。
決闘には空賊式のルールがあります。
・一対一であること。
・武器は短剣のみ。銃は反則。
このルールはわざと決着に時間のかかるように仕組まれており、
「娯楽」としても機能しています。
なので野次馬たちは周りで賭け事をしています。
しかも船は雲の上なう。2000~3000mくらいでしょうか?
そんなに高く飛べるんですね、この船。
ちなみに船長もこの時酸素マスクは付けてません。
「あいつは俺が鍛えた」とアンの前で豪語して
レヴィンより俺のが強いよ、とさりげなくマウントとってます。
意外と船長可愛いですね。
第三章は明日更新します!
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