黒沢健一さんのこと:その2
『cast』という雑誌が組んでくれた、健ちゃんの追悼特集を読んだ。未収録だったインタビュー2本と、弟である秀樹さんへのインタビュー、そして写真。94ページ読むのに1時間ほどかかった。その後、ぼーっとする時間が必要だった。
健ちゃんの思いをいつも丁寧に聞いてくれて、読者に届けてくれていたのがこの『cast』だ。亡くなったときも、きっとあの雑誌なら何か特集してくれるはずだとずっと思っていた。そしてそれが形になって、今、目の前にある。ありがたい。
それにしても、未収録インタビュー2本目…実質、最後のインタビューになったであろう記事。それの最後の最後が、「ライヴは楽しいからもっとたくさんやれるように頑張る」っていう内容だったことには愕然とした。運命って皮肉だ。健ちゃんはまだまだ先を見ていてくれたのに。
読み終わった後に浮かんだのは、亡くなってしまったら「よっ!久しぶり!」と声をかけられることもかけることもないんだな、ってこと。
実際に言葉を交わしたわけではないけれど、思い返すと勝手にこんなやりとりが私と健ちゃんの間に浮かぶのだ。
「よっ!久しぶり!新しい曲ができたよ」
聴く聴く!どんなん?…おーっ!いい!好き!
「よっ!久しぶり!ツアーで福岡に行くことになったよ」
いつ?ん、わかった!都合付ける!行く!
「よっ!久しぶり!テレビでカラオケの採点受けたよ」
見た見た。健ちゃん、採点なのに途中で「Hey!」とか入れたら点数下がるに決まってるじゃんか(笑)。
「よっ!久しぶり!ブログ更新したよ」
了解!パソコンからゆっくり読むからちょっと待っててね!
マイペースな健ちゃんの活動を、こっちは待って待って待ちわびて、受け入れる。私の返答はいつだって健ちゃんの言葉の語尾にかぶりがちだった。それくらい、ずっと待ってた。楽しみだった。
でももう、それがないんだなぁって、インタビューを読んだ後で痛感したのだ。そういう時間を、生きてかなきゃいけないんだなぁ、って。
健ちゃんが亡くなってから数ヶ月後。とあるアイドルグループの女の子が急死した。ファンの男性の思いを基に作られた記事で、こんな表現に出会った。
「推しが自分より先に亡くなることが現実になるとは想像にも及んでいませんでした」
…そうだ。そういうことだ。まあ、『推し』という単語はちょっと違うのかなと思いつつも、この表現にうんうんと大きくうなづく自分がいた。
今年も、きっともうすぐ桜が散る。健ちゃんがいたバンドの1つであるMOTORWORKSのナンバー『The End』がとても似合う、儚くも美しい時期がくる。しっかりと見つめたい。
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