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詩「その時わたしの手は」

水晶が割れた
白色の花びらが舞った
その下でわたしは膝をやや
ありえない方向へ曲げて
そうっと
呼吸の数を数えていく

てのひらのちいさな
あかぎれに
市販薬をなかなかの量塗って
顔に す と てをはわせてみる
今は真昼なのにとても静かだと
こめかみの汗筋を感じた

昨日の記憶に滲みがあった
金魚鉢に静脈血を
一滴 二滴 三
垂れ切る前に螺旋描く黒朱色
瞳孔がすこし ひらき
耐えられない柔らかさを思って
鉢を視野からのけぞらせた

明日は
スーパーに行こう
明日は
スーパーに行こう
明日は
スーパーに行こう
明日は
スパにも行こうか

春霞が乳輪をずっと薄めたころ
根の影を濃くしてゆく
足を余分に踏んで
たちきり たちきり たちきる
筋肉と 腱 が正常なうちには
こういった心持ちにはなれなかった
曙光はカーテンに遮られて
いまひとつ
金魚鉢の今の様子が見えないが
玄関先には
やけに小さなカバンを持った
君が黒灰色の装束をまとって
深々とお辞儀をし続けている
左手と 右手で そうっと

花束を

そうっと










そうっっっっっと


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