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詩「この別れのあとに」

もうひとつの散歩道を夢想する
恋人でもないあなたと同じ部屋で過ごした
時間には 音があった
きしんでいたそこかしこから
そうっと 命あるものが生まれるようだった
食事をする際には
互いの上流の音が聞こえた
スポンジに 水の音
それは始めたときから片付けのようだった
服を選ぶときには
もうずっと奥のほうが気になった
心臓はやや 厚手のフランネル
をまとって 歯茎を見せるようだった
「そういう顔を見たかったんです」
「そうですか」
「それから」
それからわたしひとりであなたと

洗面で
蛇口を下限に設定して
眺めている
これはあなたのペース
この別れのあとには
労働と食事と 時間外労働が
綾取りしている
濡れた布団を乾かしておく
くすりゆびあたりで
わたしたちはいないながら
笑い合うだろう
そこかしこのほこりが
浮足立つ























さあて、修羅。


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