詩「海と 盲目と」
海はあまりにも豊かであった
わたしの嫉妬が泳ぎきれぬ程
海はあまりにも豊かであった
ここですれ違う遠泳の表情達
浜辺の家々では鉄板がならぶ
焼けた鉄板の上で踊るような
砂浜で繰り広げられるが如き
少量の火薬を握りしめる布
片
絵画に没頭する日々の回想記
長期的に運用する窓辺の香草
ちぎり纏わりつかせる獣から
離れ安心しきった両手両足よ
海は豊かだが静かではないよ
絵を見る客達にはそう答えた
キャンバスを鉄板に替えると
数多の筆が皮膚皮膚の磁力作
用
どうでもいいと言ってしまえば
すべてどうでもよくなるような世界で
走る筆を止められないわたしの
密かな矜持達は
わたしを嫉妬させる
海が広がっていく
固着し分解され粉になり羽ばたき
手元にもどり爪先に転生しては
うずうずと雨を担って
パレットを端から端まで埋めきる
やや永遠に似た退屈さの上で
今日も瓶詰めの置き手紙のように
両手でわたしを抱きしめているのだ
今まで書いた海です。
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