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高校生向け短期集中日本文学史#3 (大正時代の文学) 全5回

文学史は地味ながら意外と定期テストで出題されて特典源になることも多いです。そのような文学史について素早く勉強をする全5回のシリーズ記事です。


大正時代の中期になると、耽美派や白樺派が見失いがちであった現実を理知的に捉えなおし技巧的に表現しようとする新現実主義が台頭した。新現実主義には二つの派閥に大別できるが、これはそれぞれの基盤となる雑誌の違いが大きく、その結果として作風の違いを与えていると言える。一つが( Ⅰ )の文科生を中心とする雑誌『新思潮』を母体とする新思潮派である。『恩讐の彼方に』の( Ⅱ )、『受験生の手記』や『破船』の久米正雄がいるが、最も有名な人物は①芥川龍之介である。芥川龍之介はイギリス文学と日本の古典文学についての素養に基づいて作品を制作しており、知的な作品が多いことで知られている。また、自伝的な小説も多く執筆しているが、幼少期の家庭環境上の問題や、愁人問題といった女性とのトラブルや、自身の精神的に患いやすい体質があり、晩年のものには暗い雰囲気が伴う。
新現実主義のもう一つの文学派閥は( Ⅲ )の学生を中心とする奇蹟派である。奇蹟派の由来は寡黙な( Ⅳ )が酒を飲んで踊りだしたのを、舟木重雄が見て、「奇蹟」と叫んだことによるものである。代表的な作家には広津和郎や( Ⅳ )がいる。

問一 ①芥川龍之介は夏目漱石に激賞されたことで文壇に登場した人物だが、そのとき激賞された作品とは何か答えなさい。

問二 ①芥川龍之介について、次の中で芥川龍之介の作品ではないものを1つ選びなさい。
ア『羅生門』 イ『地獄変』 ウ『杜子春』 エ『蜘蛛の糸』 オ『舞踏会』 カ『奉教人の死』 キ『河童』 ク『侏儒の言葉』 ケ『大道寺信輔の半生』 コ『歯車』 サ『明暗』 シ「壯烈の犠牲」 ス「日本の女」 セ「正直に書くことの困難」

問三 空所Ⅰ~Ⅳを次の選択肢で埋めなさい。
ア 早大  イ 慶大   ウ 東大   エ 学習院大 オ 永井荷風 カ 志賀直哉 キ 葛西善蔵 ク 菊池寛 ケ 広津柳浪


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解答
問一 『鼻』 問二 サ 問三 Ⅰウ Ⅱク Ⅲア Ⅳキ
解説
問一 東大の英文科で教鞭をとっていた夏目漱石の指導を受けたいと考えた芥川龍之介は、府立第三中学から東大の英文科を目指すわけですが、芥川が入学する頃には夏目漱石は退官してしまうためその願いは叶わなかったことで知られています。とはいえ、憧れの作家である漱石からの激賞があったことで、芥川龍之介は作家として活動することを決意します。その契機となったのが『鼻』であり有名な作品です。
問二 『明暗』は夏目漱石の未完の作品であり、これが不正解。選択肢のシ~セは覚える必要のないダミー選択肢ですが、ダミーが難しいものであるときは多くの場合今回のようなわかりやすい正解が潜んでいるので焦らないことが大事です。
問三Ⅰ東大 Ⅱ菊池寛 Ⅲ早稲田 Ⅳ葛西善蔵。なお、広津柳浪は広津和郎の親戚にあたる人物です。菊池寛については、芥川賞・直木賞の創設、文芸春秋社の設立など作家としての活躍以上に若手作家の育成に尽力したことで知られています。奇蹟派は新思潮派のスター達のせいで目立ちづらいものの作品自体はなかなか面白いものが多いです。ただやはり、大正時代の文壇を牽引し、大正時代の終わりとともになくなるというセンセーショナルさも相まって、大正時代=芥川龍之介と後に呼ばれるように、芥川龍之介の存在の大きさにはかなわなかったといった印象があります。

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