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高校生向け短期集中日本文学史#5(戦後の文学と総合)全5回

文学史は地味ながら意外と定期テストで出題されて特典源になることも多いです。そのような文学史について素早く勉強をする全5回のシリーズ記事です。

戦後、谷崎潤一郎『細雪』や永井荷風『踊子』など大家が再度文壇に登場するとともに、新戯作派の①太宰治や②坂口安吾らのような新人も台頭し、文学の復活が見られた。戦後派と呼ばれる人々も台頭し、『黒い絵』の野間宏、( Ⅰ )の安部公房、『野火』の大岡昌平、『金閣寺』の( Ⅱ )などが活躍した。そのような活発な文学の隆盛は起こり、昭和三十年代では『太陽の季節』の( Ⅲ )、『飼育』や『ヒロシマノート』の( Ⅳ )など多くの作家が台頭した。

問一、次の中で①太宰治の作品として正しくないものを選びなさい。
ア『走れメロス』 イ『斜陽』 ウ『人間失格』 エ『津軽』 オ『蜘蛛の糸』

問二、次の中で②坂口安吾の作品として正しいものを二つ選びなさい。
ア『舞姫』 イ『堕落論』 ウ『白痴』 エ『或る女』
オ『草枕』 カ『不如帰』 キ『金色夜叉』 ク『にごりえ』

問三、本文中の空欄Ⅰ~Ⅳの空所に補うのにふさわしい作品名や作家名を次の語群を参考に解答しなさい。

語群
石原慎太郎/中原中也/三島由紀夫/遠藤周作/小川国夫/大江健三郎
『春と修羅』/『砂の女』/『智恵子抄』/『月に吠える』/『抒情小曲集』

総合
(1)明治期の文学に関して、次に挙げる作家と作品とその作品に該当する文学派閥の組み合わせとして正しくないものが二つある。その二つを記号で解答欄に答えなさい。
ア 坪内逍遥 / 『小説神髄』 / 写実主義
イ 尾崎紅葉 / 『浮雲』 / 擬古典主義
ウ 樋口一葉 / 『たけくらべ』 / 擬古典主義
エ 森鷗外 / 『舞姫』 / 高踏派・奇蹟派
オ 島崎藤村 / 『破戒』 / 自然主義
カ 夏目漱石 / 『彼岸過迄』 / 高踏派・余裕派

(2)大正期の文学に関して、次に挙げる作家と作品の対応として正しいものを全て選びなさい。なお全て正しい場合にはキと解答しなさい。
ア 永井荷風『ふらんす物語』 イ 谷崎潤一郎『痴人の愛』
ウ 志賀直哉『暗夜行路』 エ 有島武郎『或る女』
オ 芥川龍之介『羅生門』 カ 菊池寛『恩讐の彼方に』

(3)昭和期の文学に関して、プロレタリア文学の作家と作品は1、新感覚派の作家と作品は2、その他の作家と作品は3としてア〜カの選択肢を分類しなさい。
ア 葉山嘉樹 イ 横光利一 ウ 梶井基次郎
エ 『蟹工船』 オ 『伊豆の踊子』 カ 『風立ちぬ』


解答・解説
戦後の文学
問一オ 
問二イ・ウ 
問三Ⅰ『砂の女』 Ⅱ三島由紀夫 Ⅲ石原慎太郎 Ⅳ大江健三郎

問一、太宰治は芥川龍之介に憧れており、芥川賞への強い固執に表れていますが、井伏鱒二に師事したことで知られています。また、度重なる自殺未遂という自身の人生のふるまい方にも表れているように破滅的な人生を小説の主題にすることが多いとされています。代表作は多いので選択肢の作品は覚えておきましょう。
問二、ニヒリズムやデカダンスという言葉で形容される新戯作派(無頼派)らしい文体を特徴とする坂口安吾の代表作は少ないのでしっかり覚えておきたいところです。
問三 Ⅰ、シュルレアリスム文学の筆頭であり、ノーベル文学賞受賞の可能性もあったとされる戦後の大作家の一人である安部公房は『他人の顔』、『砂の女』、『赤い繭』といった作品を著しました。
Ⅱ、古典主義的な傾向があり、戦後社会を批判して切腹自殺をした戦後大作家の一人である三島由紀夫は『潮騒』と『金閣寺』などを著しました。
Ⅲ、Ⅳ、昭和三〇年代には戦後世代の作家も活躍し始め、石原慎太郎『太陽の季節』やノーベル文学賞を受賞した大江健三郎が文壇をリードします。
ダミー選択肢について、
遠藤周作は第三の新人の1人であり、『海と毒薬』や『沈黙』で知られています。
小川国夫は内向の世代と呼ばれる作家であり、『アポロンの島』で知られています。
残りのダミー選択肢は全て詩に関する人物や作家となっていますので、簡単に詩人についてまとめておきます。

大正初期 理想主義
高村光太郎:時代の天才詩人、口語自由詩の推進、代表作は『道程』・『智恵子抄』。

大正期 口語自由詩の完成
萩原朔太郎:口語自由詩の完成、代表作は『月に吠える』、『青猫』。
室生犀星:叙情と故郷への思いを反映した作風、代表作は『抒情小曲集』と『愛の詩集』。

昭和初期 四季派(堀辰雄が創刊した『四季』を母体とする)
中原中也:悲哀、虚無、倦怠を表現する詩人、代表作は『山羊の歌』、『在りし日の歌』

文壇とは別に活躍した人物
宮澤賢治:童話作家、詩人、農業指導者など多様な顔を持つ岩手県の大詩人。詩集『春と修羅』、詩『雨ニモマケズ』、童話『銀河鉄道の夜』、『注文の多い料理店』、『風の又三郎』。

総合
(1)明治期の文学に関して
イ 尾崎紅葉 / 『浮雲』 / 擬古典主義
エ 森鷗外 / 『舞姫』 / 高踏派・奇蹟派

『浮雲』は二葉亭四迷の代表作で、写実主義の作家。尾崎紅葉の代表作は『多情多恨』や『金色夜叉』があります。
鷗外は漱石と同じで高踏派・余裕派の作家であり、奇蹟派は大正時代中期以降の早大を中心とした文学派閥。

(2)大正期の文学に関して
ア 永井荷風『ふらんす物語』 イ 谷崎潤一郎『痴人の愛』
ウ 志賀直哉『暗夜行路』 エ 有島武郎『或る女』
オ 芥川龍之介『羅生門』 カ 菊池寛『恩讐の彼方に』

これは全て正しいので答えはキとなります。どれも有名作家と有名作品なので覚えておきたいところです。

(3)昭和期の文学に関して
プロレタリア文学の作家と作品は1、新感覚派の作家と作品は2、その他の作家と作品は3としてア〜カの選択肢を分類しなさい。
ア葉山嘉樹1  イ 横光利一2 ウ 梶井基次郎3
エ『蟹工船』1 オ 『伊豆の踊子』2 カ 『風立ちぬ』3

どれも有名な作家と作品なので、押さえておきたいところです。

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