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本作りの打ち合わせ(クリス視点)

暗殺者の夜は早い。

軽くシャワーを浴び、猛暑日の汗を流した後、夏野菜のスムージーでも
飲もうと思ってダイニングに来ると、ちょうど みー が居たから ついでに
彼女の分も作ってあげた。

「ありがとう。」と彼女は言い、それを一口飲んで、
「おいしい。」と言って微笑む。あたしは彼女の笑顔が大好きだ。

彼女は何かの準備をしているようだ。気になったので
「みー、何してんの?」
と訊いてみた。

「ん、これから次回作の打ち合わせをするんだよー。」

次回作!!
それは他でもない。あたしたちの冒険譚のことだ。まちがいない。
間髪入れず、スムージーを飲み込み、
「あたしも一緒に見てていい?」
と訊くと、

彼女は こちらを見て、
「うん、べつにいいけど、たぶんタイクツだよー。」
と言ったが、そんなの神様にも分からないじゃないか。
「うん、いいよ。」
と返事をすると、彼女の部屋に促された。

「飽きたら自由にしてていいからね。」
と言われたが、飽きるなんてありえない。あたしたちのおハナシだぞ。

夜9時過ぎに打ち合わせが始まった。
相手の人の、何か、現状把握のような文字の羅列が続いた。
みー は、時々、それについて、
「ふむふむ」とか
「うーん」とか反応している。

相手の人の考えが ひととおり出揃って、何が論点なのか、あたしにも
少しだけ分かった気がして、
「これ、おハナシ以前の話なんだね。」
と、思わず、みー に訊くつもりではなかったけど、そう つぶやいていた。

すると みー は少しおどけて、
「ほほぉ。それが分かるとは おぬし、なかなかやりおるのぅ……。」
と言って、自分のアゴをさすって、無いヒゲを撫でているような、
まるで お師匠様のような仕草をしたので少し笑った。

それから みー は、あたしが思ったようなことを、言葉を変えて、他にも
いくつか相手の人に伝えて、今夜の打ち合わせは終わったみたいだった。
あたしは いくつか、みー と お話したかったけど、彼女は既に眠そうだった
し、あたしも これからクエストがあるし、それは また明日にしよう。

みー が深い眠りに就いた頃、あたしは気付かれないように そっと
深夜の街の放浪者となった。

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