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『開幕前夜』第6話「ヤツらを絶滅させろ」

 俺は現在交番にその身をおいている。

原因は財布を拾ったからだ。

当然中身など見たりはしない。

すぐさまの交番だ。

俺は警察官を夢見た幼少があるから、

交番に向かうのも警察官と会話するのも、嫌いじゃない。

 時は、

笑えるネーミングセンスの、

普通学園入学式前日。

サボり上等の俺ですら、

入学式がちっと楽しみだ。

出席はしようと思う。

どうか笑わせてくれよ?

 悠々として、

警察官との会話も並列して行う俺。

正義と悪。

望めるのなら俺は善をなしたい。

 しかし、

悪に身を置けば、

善のしらけた真実にも直面する。

だがこれだけは譲らねぇ。

正義は開き直れねぇ。

それを行った直後に、

正義は意味を失くすからだ。

 だから正義は、

警察官を続けていらっしゃる方々は、

俺は一目置く。

成れの果てが、武力鎮圧だとしてもな。

俺に警察官が尋ねてくる。

肝心かなめ、俺にとっては。

問題は拾得物の謝礼だ。

あんたの正義を見せてくれ。

俺は拒否。

そして後れて質問を送る。

「あなたは俺が謝礼を受け取るべきだと思いますか?」

ほんのわずかに狼狽えを見せる警察官。

それには俺の容姿の与える威圧感も多分にあるだろう。

体躯は190後半。

首には尖った無線ヘッドフォン。

極めつけは俺のアルビノの肌と総白髪だ。

メラニンがどうとかよくわかんねぇがな?

さすが修羅場は経験済みの大人だ。

すぐに立ち直り、応えてくれた。

「本官も受け取りは拒否するだろうな」

そうかい。

「なぜですか?」

いいねぇ沸き立つよあんた。

どうか俺の道を照らしてくれ。

「本官が欲しいものは金銭ではない」

 あんたの心、震えるぜ。

この町でひとり正義を貫こうとする大人が居る。

寮生活もまんざらじゃねぇかもな。

だが心を洗ってもらっといてすまねぇな。

俺は昏がりにその身を置いてんだ。

 次は本官だとばかり俺の身の上を尋ね始めるが、

俺は全く気にしねぇ。

尖るヘッドフォンを耳にキメて。

言の葉を紡ぐ。

有難う名も知らぬ正義の味方。

……アガるぜ……“ディスコテーク”……

……“アクセラレータ”……

……咆えろ……“瞬輝(またたき)”……

俺は文字通り瞬く間に交番を後にする。

………………
…………
……

 あんたみたいな正義の味方がいんならよ?

俺の害虫駆除も浮かばれる。

俺は絶滅者(エクスターミネータ)。

あんたの天上の光を降ろしてくれ。

名も告げぬお行儀ワルですんません。

 俺は西方、

「✕✕✕✕✕✕✕」。



 あんたがほしいのはかねか?
それとも、ゆるぎないたましいか?
いずれにせよ、かねとじかんはとうかではない。

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